CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

みなし残業制度とは、文字通り「ある一定時間を残業したものとみなす」制度です。みなし残業制度には良い面もありますが、実際の残業時間と残業代の関係が曖昧になりがちで、労働問題に発展するケースも多々あります。
今回はみなし残業制度の仕組みと導入に際しての注意点、望ましい勤怠管理について解説します。

 

みなし残業制度とは何か

みなし残業制度は、一定の残業時間分の賃金を実際の残業時間とは関係なく基本給に含めて、または基本給に上乗せして支払う制度です。固定残業代制度、定額残業代制度と呼ばれることもあります。

実際の残業時間と関わりなく一定額の残業代を支払うということを聞いて、「社員が実際に残業をしていないのに残業代を支給するとは、なんと大盤振る舞いをする会社だ」と驚かれた方もいるかもしれません。

みなし残業制度を導入する目的はいくつかあります。給与計算の簡素化・効率化です。残業代を毎月計算するのが手間なので、一定額を残業代として毎月支払うことにするのです。

給与計算の簡素化・効率化だけではありません。また、一定額の残業代を最初から支給することで、みかけの給与額を多く見せかける様に錯覚させる効果もあります。

社員を募集する場合、定額の残業代を含めた金額を給与額として求職者に提示する場合などがあります。しかし、このような場合は求職者の判断を誤らせる可能性があるので、ハローワーク等では、みなし残業制度を導入している企業には、基本給に何時間分の残業代が含まれているのかを明示するよう指導がなされています。

みなし残業制度の目的として、残業を抑制する効果も見逃せません。残業代が実際に残業をしなくとも定額で貰えるなら、できるだけ残業をしないで早く帰る方が社員にとって得です。このように、みなし残業制度は、社員ができるだけ長時間残業をしないように誘導するための一種のインセンティブでもあるのです。

みなし残業制度で、残業をしたものとして扱う時間については特に制約はありませんが、月20時間~30時間程度とする会社が多いと思います。ただし行政が定めた時間外労働の限度基準が1月45時間なので、45時間を超えて設定することは適切ではないでしょう。

なお、みなし残業制度であっても、実際の残業時間がみなし残業時間を上回った場合には、その時間分の差額を追加で支給しなければなりません。そうしないと賃金不払い残業(サービス残業)になってしまうからです。この点は注意が必要です。

 

みなし残業制度の導入で注意すべき点

みなし残業制度では、実際の残業時間と残業代の関係が曖昧になりがちです。そこで賃金規定などで、賃金の内訳を明確にして記載することが求められます。具体的には賃金について、通常の労働時間に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを明確に分けて記載しなければなりません。

たとえば、みなし残業代を基本給に上乗せして支給する会社では、「給料は基本給とみなし残業代(時間外労働20時間分)とする」と基本給とみなし残業代を分けて規定します。みなし残業代を基本給に含めて支給する会社では、「基本給には時間外労働20時間分を含む」と何時間相当のみなし残業代が基本給に含まれているかを賃金規定に明示しなければなりません。

また実際の残業時間がみなし残業時間を上回った場合には、その時間分の差額を追加で支給する旨の規定も賃金規定に織り込むことが必要です。

一方、給与明細においても、月の時間外労働時間数および残業代の額を具体的に記載することが必要です。そうしないと社員が給与明細を見たときに、自分は実際には何時間残業して、それに対してどれだけの残業代を貰ったのかが分からなくなるからです。

 

みなし残業制度で残業代はどのように計算されるのか

みなし残業制度での残業代の計算はシンプルです。実際の労働時間がみなし残業時間内に収まっておれば、追加して残業代を支払う必要はありません。実際の労働時間がみなし残業時間を超えた場合は、その超えた時間分の残業代を支払えばいいのです。

たとえば時給1,000円でみなし残業時間が20時間の方が30時間残業を行った場合、10時間×1,000円×1.25(通常の時間外割増率)=12,500円の残業代を追加で支給します。1.25は通常の時間外労働に対する割増率です。

深夜残業や休日出勤した場合は、少し注意する必要があります。通常の時間外労働の割増率とは異なるので、単純に残業時間数をみなし残業時間数と比較するだけでは足りません。たとえば上記の方が通常の時間外労働10時間、深夜労働を10時間行った場合は、

通常の時間外労働に対する割増賃金 12,500円
深夜労働に対する割増賃金 10時間×1,000円×1.5(深夜割増率)=15,000円
合計額27,500円が実際に行った残業に対する残業代です。

この27,500円とみなし残業代(20時間×1,000円×1.25=25,000円)を比較して、差額を支給しなければなりません。

 

みなし残業制度での勤怠管理の留意点

みなし残業制度は、実際の残業時間に関わりなく一定額のみなし残業代を支払う制度なので、残業管理をしなくてもよいと誤解をしている方もいます。しかし、みなし残業時間を超えた場合は追加で割増賃金を支給しないといけないことからも分かるように、会社は社員の勤怠を適切に把握しなければならないのです。残業管理に関しては、みなし残業制度を導入している企業もそうでない企業も全く同じです。

実際の残業時間とみなし残業時間との乖離についてもチェックすることもポイントです。残業時間の削減が進んだのに、相変わらず従前と同じ額のみなし残業代を支給し続けている会社もあります。これは人件費ロス以外の何ものでもありません。一定の経過措置を設けて、賃金規定の変更(みなし時間の変更)を行うとよいでしょう。