CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

働き方改革の一環として長時間労働の是正や働きやすい職場環境を整備する動きが加速しています。その中でも特に目が離せないのが、残業時間の上限規制の導入でしょう。一方で、中小企業で猶予されていた月60時間超の時間外労働の割増賃金率が引き上げられるという法改正も噂されています。

今回は残業時間の上限規制の導入と割増賃金率の引き上げに関する議論をまとめて紹介します。

 

残業時間の上限規制の導入とは何か

安倍内閣が主導する働き方改革実現会議において、「働き方改革実行計画」が平成29年3月28日に決定されました。「働き方改革実行計画」は、今後の働き方改革の具体的な内容・方向性を示したロードマップです。このロードマップの決定を受けて、厚生労働省労働政策審議会の分科会等で本格的な働き方改革議論が始まっています。

その中でも、目玉となるのが残業時間の上限規制の導入です。残業時間の規制に関しては、現状でも36協定による上限規制があります。

36協定(労働者と使用者の代表による時間外・休日労働に関する協定)は事業場ごとに残業時間の上限を労使合意の上で設定したものです。この上限を設定するときに参照されるのが、「時間外労働の限度時間基準」というガイドラインです。このガイドラインでは、時間外労働の上限が「1月45時間かつ1年360時間まで」となっています(1年単位の変形労働時間制を除く)。

しかし実際の事業場では、この時間外労働の上限基準を超えてしまうところが多いのではないでしょうか。そこで上限基準を超えてしまう事業場については、本来の36協定に「特別条項」という一文を加えて協定を締結しています。
詳細は略しますが、この特別条項を加えることで、時間外労働の上限が実質的に無制限、青天井になってしまうのです。この法令により上限基準を超えて労働する企業は後を経ちません。

そこで上限規制を実効性のあるものにするために、単なるガイドラインでしかない「限度時間基準」を、拘束力のある法条文(労働基準法)に格上げしようとする動きがあります。拘束力があるというのは、違反者には罰則が適用になるということです。

そして一時的な繁忙期において、特例的に「36協定の特別条項」を発動する場合でも、時間外労働の上限は年720時間までとなる見込みです。この場合、単月では、休日労働を含み 100 時間未満としなければなりません。

加えて残業時間は、「休日労働を含み、2ヶ月ないし6ヶ月平均で80時間以内」という制限も課される見込みです。具体的な例で説明すると、ある月に90時間残業させると、次の月は70時間までしか残業ができなくなるということです(2ヶ月平均で80時間以内)。

なお、原則である月45時間の時間外労働を上回る回数は、年6回までという制約も課されるので、残業規制はこれまでとは異なり、非常に強固なものとなりそうです。

残業時間の上限規制の枠組みの整理

上記の残業時間の上限規制の枠組みを再整理すると以下のようになります。

(1)原則の上限規制(通常の36協定のみ)
時間外労働の上限:1月45時間かつ1年360時間まで
(2)特例の上限時間(特別条項付き36協定を締結)
1.時間外労働の上限:年720時間
2.休日労働を含み、単月で 100 時間未満
3.休日労働を含み、2ヶ月ないし6ヶ月平均で80時間以内
4.原則である月45時間の時間外労働を上回る回数は、年6回まで

 

割増賃金率の引き上げとそのインパクト

今回の残業時間規制の導入議論とは別に、以前から中小企業にだけ猶予されていた「月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ」が行われる可能性も出てきました。

この「月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ」は、大企業については、平成22年4月1日からすでに実施されています(労働基準法37条1項)。
人件費コストが大幅にアップするため、中小企業に配慮して実施が猶予されていたのです。

この割増賃金率は、具体的には時間外労働が1ヶ月60時間を超えた時点から、現行の25%から50%に上昇します。たとえば時給1,000円の社員が残業を行うと、通常は25%増しの時給1,250円になります。そしてその社員がさらに残業を続けて月60時間を超えると、超えた時点から時給1,500円になります。
時給単価1,000円が1,500円になるのですから、大きな負担になります。
ただし長時間労働の抑制という働き方改革の趣旨からすると、長時間労働の抑制に非常に効果がある施策ということになります。

なお、各事業場で労使協定を締結すれば、1ヶ月60時間を超える時間外労働を行った社員に対して、25%の追加の割増賃金の支払いに代えて、有給休暇を付与することができます(労働基準法37条3項)。
(本来の25%の割増賃金部分は、有給休暇に代えることはできず、そのまま賃金として支払う必要があります)

どういうことかと言うと、通常の割増賃金である時給1,250円が60時間を超えることで1,500円となった場合の差額250円を数時間分合算して有給休暇として付与することができるという意味です。
具体例で説明すると、たとえば60時間を超える残業を32時間させると250円×32時間=8,000円の追加の割増賃金を支払わないといけませんが、その支払いに代えて8,000円相当の有給休暇を与えることができるということです。この8,000円、時給単価1,000円の社員であれば1日分の賃金に該当します。
仕事が忙しく長時間残業をしている社員に対して有給休暇を与えるということは、現実的にはあまり考えられないですが、法律上は、このような対応策も用意されています。

残業を減らすために業務効率を上げるなど各社いろいろ工夫されていますが、まずは企業と社員で取り組む「ノー残業デー」の設定が非常に効果的な施策だと思われます。
ノー残業デーを一度試してみてはいかがでしょうか。