CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

「うちは毎日朝からみっちり朝礼をやるんだよ。」とか「うちは社員の健康のために皆でラジオ体操をするんだよ。」というような話をされる経営者の方が時々いらっしゃいます。

「なるほどそれは素晴らしい」とは思うのですが、朝礼やラジオ体操は、場合によっては労働時間にカウントされ、賃金が発生します。
それにも関わらず「朝礼等には当然賃金を支払う必要がない」と考えていらっしゃる方が少なくないようです。

そこで今回は、「労働時間」とは何か、そして朝礼やラジオ体操はどのような場合に労働時間となるのか、という点について詳しく解説します。

 

労働時間とは

「従業員の行為が労働時間に含まれる」となれば、それはイコール賃金が発生するということです。
したがって、労働時間に含まれるかどうかは重要な点ですが、どのような行為が労働時間に含まれるのでしょうか。

一般に「労働時間」とは、従業員が「使用者の指揮命令下」に置かれている時間を言います。
つまり使用者の指示や命令に従って、従業員が行動する場合、その時間は「労働時間に含まれる」ということになります。

また従業員の行為が労働時間に含まれるか否かは、その行為を客観的に分析することで判断されます。
したがって就業規則等で「朝礼は労働時間に含まれない。」と規定してあったとしても、それが適用されるというわけではありません。
あくまでも「従業員の行為が使用者の指揮命令下に置かれていたか否か」により判断されます。

 

朝礼・ラジオ体操は労働時間?

ではどんな場合に、朝礼やラジオ体操が、従業員の行為が「使用者の指揮命令下」に置かれた状態で行われていると言えるでしょうか。

色々な考え方があるところですが、朝礼等への参加がどれくらい従業員に「義務付けられていたのか」に注目すると分かりやすいと思います。

以下のように、ケース別に考えてみます。

1.参加が強制されている場合
「○○時に集合して朝礼やラジオ体操に参加しなければならない。」というルールが会社にある場合、朝礼等は当然に「使用者の指揮命令下に置かれて行われている」と言えるので、これは労働時間に含まれます。
2.参加しないと不利益になる場合
「朝礼やラジオ体操に参加してもしなくても良いが、参加しなければ人事考課上不利益になる。」というような場合は、実質的には参加が強制されている場合と同じと言えます。
したがってこの場合も、労働時間に含まれます。
3.朝礼やラジオ体操の際に当日の仕事について説明するような場合
朝礼等で当日の仕事について説明するような場合、朝礼に出ないと当日の仕事を円滑に進められないことから、従業員はこれに参加せざるを得ません。
よって、この場合も実質的に参加が強制されている場合に近いと言えるため、原則として労働時間に含まれます。

一方で、従業員が自主的に朝礼等を行っている場合、その時間は労働時間には含まれません。
使用者の指揮命令下に置かれた状態で朝礼等が行われているとは言えないからです。

また朝礼等の他にも、着替え、点呼、交代引継、ミーティング、掃除などといった行為も、上記のような考え方で、「労働時間」に含まれるか否かを考えることができます。

 

朝礼・ラジオ体操を巡る企業のリスク

以上のように、朝礼等が労働時間に含まれない場合は多くないということが分かります。

そこで、朝礼等が本来労働時間に含まれるにも関わらず、それに含まれない運用をしている場合、企業にどんなリスクがあるでしょうか。

まず従業員が朝礼等をしていた時間=労働時間に対して、賃金を支払っていなかったということになるので、朝礼等を行った時間につき、企業は遡って通常の賃金を支払う義務を負う可能性があります。

さらに労働基準法32条によれば、労働時間上限は原則として1日8時間、週40時間であると定められています。
そこで朝礼等を除いた業務時間が既に労働時間上限いっぱいだった場合、朝礼等の時間は「時間外労働」として扱われる可能性があります。
その結果、企業は時間外手当についても支払う義務を負うことになりかねません。

実際に最近、自動車メーカーが、監督署からの是正勧告を受けて、従業員に対して、数分の体操時間等に対する未払い賃金を支払ったという報道がありました。

朝礼等を「労働時間」に含めるか否かは、実態に即して慎重に判断されることをお勧めします。

 

朝礼やラジオ体操にも勤怠管理を

朝礼等が労働時間に含まれる場合、そういった時間についても当然勤怠管理を徹底する必要があります。
就業時間前から朝礼や体操をし、そのまま業務を開始する場合、「朝礼等の開始時点」を「始業時間」として管理しなければなりません。

また休憩中にラジオ体操をするような場合、それが労働時間に含まれるとすれば、その時間についても勤務時間として管理しなければなりません。

朝礼やラジオ体操は従業員のためにしている、と思われる方もいらっしゃると思いますが、本来労働時間に含まれるにも関わらず賃金が発生しないとあっては、逆に従業員の士気を下げることにもつながりかねません。
朝礼等にもしっかりと勤怠管理をされることをおすすめします。