CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

経営者の方や人事担当者の方から、「従業員Aを今度管理職にするので、今後は時間外手当を払わなくて良いですよね?」というようなご質問をいただくことがあります。

時間外手当を払わなくてよいのは「適用除外労働者」と呼ばれる人に対してであり、管理者全員に当てはまる話ではないのですが、不正確な理解をされている場合があるようです。

そこで今回は、まず「適用除外労働者」について、そしてその中で最も問題となりやすい「管理監督者」について詳しく解説します。

 

適用除外労働者とは

労働基準法では、「週の労働時間を原則1週40時間1日8時間までとする、最低でも週1日は休日としなければならない」など労働時間や休日について色々な規定が定められています。
しかし業務の性質や労働者の地位によっては、こういった規定の適用がなじまないこともあります。

そこで一部の労働者にはそれらの規定の適用が排除されるのですが、そういった労働者のことを「適用除外労働者」と呼びます。

「適用除外労働者」にはいくつかの種類があるのですが、実際上最も問題となりやすいのは「管理監督者」です。

 

管理監督者とは

「管理監督者」とは労働基準法41条2号に定めのある「監督若しくは管理の地位にある者」を略した言葉です。
「管理監督者」だと認められると、様々な労働基準法上の規程が適用されなくなります。代表的なものは以下の通りです。

  1. 「労働時間を1日8時間、週40時間まで」と定めた労働基準法32条
  2. 「毎週1日以上の休日を必要とする」と定めた同法35条
  3. 「時間外労働及び休日労働」を定めた同法36条
  4. 「時間外労働及び休日労働に対する割増賃金」を定めた同法37条

これら全てが適用されなくなる結果、「管理監督者」に対しては、法定労働時間を超えたとしても、また休日に労働させたとしても、時間外手当や休日手当を支払う必要はありません。

以上のように、「管理監督者」は一般の労働者よりも労働基準法上の規制が緩くなるわけですが、ではどんな労働者が「管理監督者」に当たるのでしょうか。

 

どんな人が管理監督者に当たるのか

まず注意すべきなのは、「管理監督者」であるか否かは、労働の実態に即して判断されるということです。
したがって、「店長」や「課長」といった役職名だけで「管理監督者である」と言うことはできません。

そこでどのような労働の実態があれば「管理監督者」に当たるのかですが、一般的に以下のような条件を満たす者であると言われています。

1.経営者と一体的な立場で仕事をしている
経営者と一体的な立場で仕事をしていると言えるためには、経営者から管理監督、指揮命令にかかる一定の権限を委ねられている必要があります。
自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事案について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような場合は、「管理監督者」には含まれません。
2.出社や退社、勤務時間について、自らの裁量に任されていること
会社から労働時間について厳密に管理されており、遅刻や早退をしたら、給料や賞与が減らされるような場合は「管理監督者」とは言えません。
3.その地位にふさわしい待遇がなされていること
「管理監督者」はその職務の重要性から、定期給与、賞与その他の待遇において一般社員と比較して相応の待遇がなされていることが必要となります。

以上のように、「管理監督者」は経営者と一体的な立場にあり、勤務時間等について自らの裁量に任されていることから、その労働時間を厳密に管理することになじみません。
またその地位にふさわしい待遇を受けることから、時間外手当等が支給されなくても問題ないと考えられています。

 

管理監督者を巡る企業のリスク

休日労働や時間外労働に手当を付けることは、労働基準法上の大原則であり、「管理監督者」はその例外に過ぎません。
「管理監督者」を選定する場合には、上記の条件を本当に満たすかどうか慎重な判断が必要です。

実際にも、管理監督者となっていた従業員が、「自分は本来、管理監督者ではなかった」として、会社に対して、今までの支給されていなかった時間外手当等の請求をする裁判が多くあります。
近年では、ファーストフード店に対する裁判(東京地方裁判所平成20年1月28日判決)が社会的に大きく話題になり、「名ばかり店長」という言葉が流行しました。
この事件ではファーストフード店の店長が勝訴し、運営会社側には過去の時間外手当等(750万円以上)を支払うことが命じられました。

このように不用意に「管理監督者」としての取り扱いをしている場合、訴訟に発展する可能性もあります。
企業側が敗訴した場合、高額の未払残業代等の支払いを命じられるケースも想定されますので注意が必要です。

 

管理者にも勤怠管理を

以上のように、「管理職」と呼ばれる立場の従業員であっても、上記の条件を満たさない限りは、時間外手当や休日手当を支払う必要があります。
したがって、管理職の従業員に対しても基本的には、出社時間、退社時間などの勤怠をきっちりと管理することが大切です。

近年では従業員のライフワークバランスを考慮することが企業に求められています。
管理職に対しても、加重労働にならないよう、しっかりとした管理が必要となります。