CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

賃金台帳は、従業員を雇う会社において、作成や保存の義務がある労働者名簿、出勤簿とともに法定三帳簿のひとつです。
企業には、正しく記載された賃金台帳を作成・保存することが求められ、労務管理上、非常に重要な帳簿です。
今回は、賃金台帳の保存方法や、もし保存されていない場合どのような事態が発生する可能性があるのか解説します。

 

賃金台帳の作成・保存義務

賃金台帳とは、簡単に言えば、従業員の給与の支払い状況を記載した書類のことです。
労働基準法第108条、109条によって作成・保存が定められたものであり、同じ会社であっても場所的に離れた別の事業場があれば、「事業場ごと」に作成・保存しなければなりません。

例えば、本社、A工場、B工場及びC営業所を有する企業においては、本社に全体の従業員の賃金台帳を作成しておくだけでは違法であり、本社・A工場・B工場・C営業所にそれぞれの所属従業員の賃金台帳を(写しでも可)を作成・保存しなければなりません。
ただし、場所的に離れているものであっても規模が著しく小さく、組織的な関連や事務能力等を勘案して一つの事業場という程度の独立性が無いものは、直近上位の機構と一括して一つの事業場として取り扱うことも可能です。

労働基準法第108条
使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
労働基準法第109条
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。

賃金台帳は、賃金の支払いのたびに必ず記入しなければならず、賃金は毎月1回以上支払う必要があることから、賃金台帳も毎月1回以上記入することが必要です。

記入にあたっては労働時間数を正確に管理することが必要不可欠であり、時間外労働や休日労動、深夜労動の時間数もそれぞれ明確にしなければなりません。
賃金台帳は、不意に訪れる労働基準監督署による監督指導でも必ずチェックされる重要書類であるため、常に備えておく必要があります。

また、保存については、起算日が重要で、最後の記入日を起点として3年間の保存義務があります。
ただし、この法定期間というのは、最低限の期間ですので、実務的には5年以上保存しておくことをお勧めします。

>>労働基準法

>>東京労働局 よくあるご質問>労働安全衛生関係

 

保存方法について

賃金台帳は、必ずしも紙で保存する必要はなく、PCによる管理も認められています。
ただし、もし労働基準監督署から賃金台帳を求められたときには、すぐに表示、印刷できることが条件なのでご注意ください。
本社で一括して作成する場合は、事業場ごとにまとめておき、各事業場に配布しておくと良いでしょう。
誤って、保存しておかなければならなかった賃金台帳を廃棄してしまわないためにも、賃金台帳を更新した日付を記載しておくとより安心です。

 

賃金台帳の不備や保存していなかった場合の罰則

きちんと保存していなかった場合、どのような不利益があるのでしょうか。

法律に定められた基準に満たない賃金台帳であった場合や、そもそも賃金台帳を作成していない場合は罰則の対象となります。
労働基準法第120条により、場合によっては30万円以下の罰金に処させる可能性もあります。

しかしながら、賃金台帳の基準に満たないからといって、すぐさま罰則が適用されることは、よほど悪質でない限り考えにくいのも事実です。
賃金台帳の不備が明らかになった場合は、一般的には、労働基準監督署から是正勧告という、勧告書を受け取ります。
是正勧告に従わなかった場合は、罰則の適用が考えられますので、是正期日までに、正式な賃金台帳を用意し、是正完了の日付とともに是正報告書を労働基準監督署に提出しましょう。

 

労基署の是正勧告事例

賃金台帳の保存義務に違反していたため、実際に労働基準監督署から是正勧告があった例をご紹介します。

賃金台帳を保存していなかった事例
IT業のA社は、パートタイマーが10人以上いて、労働者の入社・退職も非常に多い会社でした。
賃金台帳は調製していたのですが、現在在籍している労働者分のみ調製、保存しており、退職した労働者の賃金台帳は必要ないと考え退職後には捨てていました。
そのような中、労働基準監督署から指摘が入り、期日までに是正するよう是正勧告がありました。
労働基準監督署からの指摘の内容を踏まえ、私からこちらの会社には今後賃金台帳を法定の3年間保存するように改めていただくよう指導し、3年間保存することで特にそれ以上の罰則はありませんでした。

このように賃金台帳を保存していないと不意に労働基準監督署からの是正勧告を受け、是正に向けた対応を急ぐことになります。
今回の事例では当てはまりませんが、虚偽陳述するなど悪質な場合は書類送検もあり得ますので、注意が必要です。

 

まとめ

今回はきちんと賃金台帳を保存することの重要性をお伝えしましたが、ご理解いただけましたでしょうか。
賃金台帳を作成し保存することは、従業員を雇い入れる企業にとっての義務でもありますが、正しく労務管理を行っていることを証明するためにも大切なものです。
特に中小企業では賃金台帳を正しく作成・保存されていないこともあります。
余計な対応に時間や労力を費やすことにならないよう、本業に集中するためにも、法律で決められたルールを守り、賃金台帳をしっかりと保存するようにしておきましょう。

【原稿執筆者】
社会保険労務士法人ユニヴィス 社会保険労務士
池田

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