CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

賃金台帳は、労働基準法により作成・保存が義務付けられている帳簿です。
したがって従業員を1人でも雇っていれば、必ず適切に作成・保存をしなければなりません。
しかし実際のところは、賃金台帳を備えていない、あるいはその記載内容が不十分であるなど、不備がある場合も少なくありません。
そこで今回は、賃金台帳に用いるべき様式、記載しなければいけない事項、保存すべき期間、給与明細との違いなどについてお伝えします。

 

賃金台帳とは?

賃金台帳とは、労働基準法第108条によって使用者に作成が義務付けられている法定帳簿で、給与支払に関する情報を記録するためのものです。
賃金台帳、出勤簿、従業員名簿を法定三帳簿と呼びますが、その中でも賃金は従業員の生活に直結する重要な事項です。
その記録を正確に残すという趣旨から、法律などにより様々な定めがあり、普段から法律のルールに則った作成・保存を心掛けなければなりません。

賃金台帳を作成する対象は、全ての従業員です。
パートやアルバイトはもちろん、日雇労働者であっても作成する必要があります。
なお役員については、そもそも従業員ではないため作成の必要はありませんが、兼務役員の場合は、従業員としての立場も併せ持つため、作成の対象です。
また複数の事業所がある場合は、事業所ごとに作成・保存しなければなりません。

さらに賃金台帳は、賃金が支払われるたびに記入しなければなりません。
したがって、月に1回は必ず記入します。

 

賃金台帳に記載すべき事項・用いるべき様式

賃金台帳は、給与に関する情報を任意に記載すればよいのではなく、記載すべき事項が以下のとおり決められています。

  1. 労働者氏名
  2. 性別
  3. 賃金の計算期間
  4. 労働日数
  5. 労働時間数
  6. 時間外労働時間数
  7. 深夜労働時間数
  8. 休日労働時間数
  9. 基本給や手当などの種類と額
  10. 控除項目と額

「賃金の計算期間」では、当月の賃金計算の開始日から締め日を記載します。
例えば月末締めの会社であれば、2019年6月1日~6月30日と記載します。
ただし雇用期間1か月未満の日雇労働者などの場合、賃金の計算期間を書く必要はありません。

「労働時間数」については、「時間外」「深夜」「休日」とそれぞれ個別に計算して、時間数を記入する必要があります。

「基本給や手当などの種類と額」では、基本給と手当を分けて記載します。
手当についても項目ごとに分けて、手当名とその額を記入します。

「控除項目と額」では、社会保険料など給与から控除される項目を記載します。
また弁当代や親睦会費など会社で独自に控除しているものも記載します。
ただし、法定外の控除をする際には、「賃金控除に関する協定」を結ぶ必要があります。

以上の項目を網羅していれば、どのような様式で作成・保存しても問題ありません。
ですが厚生労働省作成の様式を用いれば、以上の項目を網羅した賃金台帳を作ることができるため、そちらを使うことをおすすめします。

>>厚生労働省 主要様式ダウンロードコーナー

 

賃金台帳と給与明細の違い

わざわざ賃金台帳を作らなくても、従業員に毎月渡している給与明細を賃金台帳として代用できないか、と思われる方もいらっしゃると思います。
給与明細は、従業員に対して給与の額を説明するためのものであり、賃金額や控除額は記載されているでしょう。

しかし性別や労働時間数などは書かれていないことが多いです。
そうすると前述の10項目を網羅できていないため、賃金台帳として代用することはできません。
その場合は、やはり賃金台帳を別に作る必要があります。

 

賃金台帳の保存について

賃金台帳は、労働基準法第109条によって、3年間の保存義務が課せられています。
また3年間の起算日は、「最後の記入をした日」とされています。
なお保存は必ずしも紙媒体で行う必要はなく、電子データによる保存も認められています。
ただし必要となったときにすぐに画面上に表示し、また印刷できる状態を整えておかなければなりません。
したがってデータだけを備えておくのでは不十分で、それを表示できるパソコンや印刷できるプリンターなどが必要です。

また監査などが行われた時に、どこに保存してあるか分からないと困るので、しっかりと整理して保存しておく必要があります。
さらに誤って消去してしまう可能性もありますので、バックアップなどを行っておくとよりよいでしょう。

 

賃金台帳に関する罰則について

賃金台帳の作成・保存に関して法違反がある場合、労働基準法第120条により、30万円以下の罰金となる可能性もあります。
監査などを契機に違反が発覚したとしても、よほど悪質な場合でない限り即座に罰金が科せられるということは少ないと思いますが、やはり普段から10項目を網羅した賃金台帳を、全従業員分、毎月しっかりと管理していくことが重要です。