CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

就業規則を作成または変更する際、労働者代表から意見を聴取しなければいけません。
しかし意見聴取が適切に行われていないケースは少なくありません。
例えば、労働者の過半数が加入する労働組合がない場合、労働者代表を民主的な手続きで選出しなければいけないのですが、会社が適当に指名してしまっている場合があります。そこで今回は、意見聴取の流れ、気をつけるべきポイントについてお伝えしたいと思います。

 

就業規則の意見書とは?

「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は、就業規則の作成義務があり、また就業規則を作成あるいは変更した際、その就業規則を管轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
そして就業規則を提出する場合には、「意見書」を添付しなければなりません。
「意見書」は名前のとおり、労働者側に、就業規則についての意見を述べてもらうための文書です。
就業規則の内容について労働者側によく知ってもらうなどという目的で作られるものです。
事業所の労働者の過半数が加入する労働組合がある場合、その労働組合に意見書を記載してもらいます。

 

一方で、事業所の労働者の過半数が加入する労働組合がない場合は、その事業所の労働者において、労働者代表を選出し、その労働者代表に意見書を記載してもらいます。
この意見書は、事業所ごとに作成する必要があります。
したがって、複数の事業所があり、かつそれぞれ就業規則を提出する場合は、その事業所の数だけ意見書の作成が必要です。
また労働者代表についても、A事業所の意見書にはA事業所所属の労働者、というように、その事業所に所属している労働者代表を選びます。

 

労働者代表になれない人とは?

前述のように、事業所の労働者の過半数が加入する労働組合がない場合は、労働者代表を選出します。
しかし労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者については、労働者代表になることができません。
管理監督者に該当するか否かは、労働の実態に即して判断されますが、一般的に以下のような条件を満たす者であると言われています。

  1. 経営者と一体的な立場で仕事をしていること
  2. 出社や退社、勤務時間について、自らの裁量に任されていること
  3. その地位にふさわしい待遇がなされていること

したがって、このような者以外の労働者を労働者代表に選ぶ必要があります。

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労働者代表はどうやって選ぶ?

労働者代表を選ぶ際は、経営者側が適当に指名をして決めてしまっているケースが少なくありませんが、そのような選出方法は認められません。
なぜならば、労働者代表の選出は、民主的な方法によって行わなければならないからです。
経営者による指名は、労働者が関与しておらず、民主的な方法とは言えません。
民主的な選出方法としては、労働者による話し合いや、挙手・投票などがあります。

 

話し合いで決める場合は、労働者を集めて、誰が労働者代表にふさわしいかを話し合ってもらいます。
朝礼など皆が集まる機会がある場合は、その際に行ってもよいでしょう。

挙手や投票によって選出の場合は以下のような流れになります。

1.就業規則の作成、変更に際して労働者代表を選出することを知らせる

例えば

  • メールで全社員向けに送信する
  • 朝礼等の場で告知する
  • 誰もが見る掲示板等に公示する
2.選出を行う

例えば

  • メールでふさわしい人を記入し送信してもらう
  • 投票箱を設けて投票してもらう

いずれの方法による場合でも、就業規則の意見書に意見を書いてもらうための選出である旨を予め明らかにしておく必要があります。
上記のような民主的な方法によらないで労働者代表を選出していた場合、その選出が無効であると判断されかねません。
その場合、就業規則の制定や変更も無効であると判断されることも考えられます。
そうなったら、その就業規則を前提に行ってきた会社運営に支障をきたす可能性もあるため、労働者代表の選出はしっかりと行う必要があります。

 

労働者代表に反対された場合はどうする?

労働者代表を選出した後は、選ばれた労働者に対して、就業規則の作成や変更について説明し、それに対する意見をもらいます。
特に意見がなければ「異議なし。」や「特にありません。」などと書いてもらいます。

 

問題は、労働者代表が就業規則の内容に納得しなかった場合です。
仮に「意見書」に反対意見などが書かれていたとしても、就業規則の効力には影響しないと考えられています。
そのような意見書を添付したとしても就業規則の作成や変更は完了します。
しかし社内で反対意見がある中で、そのような就業規則の制定を強行すれば、労使関係に悪影響を及ぼすため、望ましくないでしょう。
特に就業規則を労働者に不利益な方向に変更するような場合は、やはり反対意見が出ることも多くなります。

 

したがってそのような場合は、就業規則を作る前に、そのような変更に至った経緯や理由などを予めよく説明し、できるだけ納得を得られるよう働きかけておくことが大切です。
その上で、労使ともに納得できる落としどころを探すなどしたうえで、就業規則を作るとよいかと思います。