勤怠管理を怠ると法律違反のブラック企業? 法律上における勤怠管理の重要性を確認する!
「うちの会社は残業時間が少ないから、勤怠管理なんて必要ない!」
「従業員が勝手に残業しているのは本人の意思だから、会社は関係ない!」
そのような会社の従業員の勤務実態をみてみると、仕事が終わらずに深夜まで仕事をしている、また、長時間の過重労働が原因でメンタル不調を起こし長期休業になってしまった・・・など様々な状況が起こっています。
今回は、ブラック企業と呼ばれる定義や基準は何か、勤怠管理を怠ると法律違反になるのか、労働時間の考え方、また、勤怠管理を行うことの重要性について解説します。
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ブラック企業の定義(基準)・実態と法的処置(罰則)は?
ブラック企業とは、違法、過酷で劣悪な労働を強いる企業として、一般的に認識されています。
長時間労働(安全配慮義務違反)、残業代の不払い、詐欺まがいの契約(固定残業代、直前での雇用形態の変更など)、名ばかり店長(管理職)やみなし裁量労働制の濫用、パワーハラスメントやセクシャルハラスメント環境、過労鬱、過労自殺、過労死、または、その隠ぺい、会社に法律の規定に基づいたルールがなく、一方的で強制的な経営者等がルールブックになっている環境で働く場合、従業員の人権を踏みにじるような行為が行われることにより、そこで働く労働者は疲弊してしまいます。
厚生労働省では、「ブラック企業」について基準を設け、定義することはしていません。
しかし、特徴的なものとして、以下の3つを示しています。
- 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
- 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
- 1、2のような状況下で労働者に対し過度の選別を行う
未払い賃金や不当解雇によって、従業員が労働監督署へ駆け込むことで、会社への臨検(立入調査)や裁判への訴訟が行われることもあります。
裁判が行われた場合には、労働者保護の観点が優先されることが多いため、会社が敗訴となり、多大な金額の未払い残業代を支払うことや、会社の評価が下がりイメージが悪くなることによる本業への影響、さらに人手不足の中で、人の募集も難しくなるという状況に陥ることが考えられます。
また、長時間労働や賃金不払いなど労働関係法令に違反した疑いで送検された企業などは、厚生労働省にて毎月、ブラック企業リストと呼ばれる「労働基準関係法令違反に係る公表事案」サイトに企業名が公表されることもあります。
勤怠管理を怠ると法律違反?
労働基準法は、職場における様々なルールを定めたもので、労働条件に関する『最低基準』を規定しています。
その中には、労働契約の期間の制限や労働条件の明示、賃金の支払いに関する原則や労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇などがあり、違反すると懲役や罰金刑が科せられる強行法規となっています。
勤怠管理を行う上での規定として、労働基準法第108条に、「使用者は、事業場ごとに「賃金台帳」を作成し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない」ことを義務づけており、労働日数、労働時間数、時間外労働、休日労働及び深夜労働の時間数が記載すべき内容となります。
この記載がされていない場合、賃金台帳調整義務違反で、30万円以下の罰金となる可能性があります。
また、労働基準法第109条では、会社に対し、「労動関係に関する重要な書類」の3年間保存を義務づけており、出勤簿やタイムレコーダーで打刻されたタイムカードなど勤怠が記録されたものや、賃金台帳等が該当します。
もし、労働基準監督署の調査が入った際に、帳簿書類を提出せず、または虚偽の記載をした帳簿書類を提出した場合には、30万以下の罰金となることがあります。
また、労働日数管理ができていないために、法定通りに有給休暇を与えなかった場合には、労働基準法第39条違反となり、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となる可能性があります。
厚生労働省では、平成29年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を策定し、使用者には労働時間を適正に把握する責務があることを明確にしています。
着替え(更衣時間)や移動は労働時間になるのか?
「労働時間」という用語は、日常用語としては、休憩時間を含めた拘束時間を指すこともありますが、労働基準法上は、休憩時間を除いた実労働時間を指します。
労働基準法上の労働時間に当たるかどうかは客観的に判断され、就業規則などで労働時間とされた時間がそのまま法律上も労働時間と扱われるわけではなく、実態として労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間のことを指します。