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短時間正社員制度とは?制度のメリットや導入時に押さえたいポイントを紹介!

短時間正社員制度とは?制度のメリットや導入時に押さえたいポイントを紹介!

正社員と言えば、労働契約期間の定めのないフルタイム労働者のことをイメージしますが、最近は同じ正社員であっても、労働時間が短い者、勤務地が限定されている者、職種(仕事内容)が限定されている者など、さまざまなタイプの労働者が増えてきました。

このように多様化した正社員のことを、従来のフルタイム正社員と対比させて限定正社員と呼ぶことがあります。
限定正社員とは、正社員と同様に無期契約期間での雇用が確保されている一方で、それぞれのニーズに合わせて働き方を選択することができる社員のことです。

今回は限定正社員の活用が双方のメリットとなれるよう、その1つである「短時間正社員制度」のメリットと導入のポイントについて解説します。

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短時間正社員とは?無期労働契約で所定労働時間が短い正社員

短時間正社員とは、フルタイム正社員と比較して1週間の所定労働時間が短い正社員のことをいいます。

短時間正社員は無期契約である点が、有期契約のパートタイマー(短時間労働者)と大きく異なります。また本制度は、育児介護休業法において一定の要件を満たした労働者だけが請求できる短時間勤務措置とも異なります。短時間勤務措置は、正社員が一時的に短時間勤務を請求できるだけで、法定の要件からはずれた時点でフルタイム勤務に戻らなければなりません。自分の意思で短時間勤務を続けることはできないのです。

 

短時間正社員制度が「社員・企業・社会」に与えるメリット

<社員に与えるメリット>

  1. ワークライフバランスの実現
  2. 正社員登用を通じたキャリア形成の実現
  3. 処遇の改善
  4. 職場全体の長時間労働の解消

<企業に与えるメリット>

  1. 意欲・能力の高い人材の確保
  2. 生産性の向上
  3. 満足度の向上による定着
  4. 労働関係法令等の改正への円滑な対応

<社会に与えるメリット>

  1. 仕事と子育ての両立の実現を通じた、少子化への対応
  2. 仕事と介護の両立の実現を通じた、高齢化への対応
  3. 労働力人口の減少への対応
  4. 企業競争力の向上を通じた経済環境の改善

 

なぜ短時間正社員が増えているのか

最近、短時間正社員制度を導入する企業が増えてきているようです。

その契機となったのが、平成25年4月の労働契約法の改正(有期から無期契約への転換請求権の創設、労働契約法18条)です。 
この改正によって、有期の労働契約期間が通算5年を超えた場合に、無期労働契約に転換請求できる権利が認められました。

そして平成30年4月には、この無期転換請求権を行使して、有期契約労働者から無期契約労働者に転換した事例が生まれました。

すべての有期労働契約者が対象となるため、フルタイム社員だけでなく、パートタイマーであっても、5年を超えた場合は無期雇用契約に転換、つまり短時間正社員が生まれるのです。

短時間正社員制度が注目される背景には働き方改革だけでなく、労働契約法の改正も影響していることがわかります。

 

短時間正社員制度を導入するためのポイント

パートタイムから無期契約になる短時間正社員は、今までと全く同じ位置づけでは労務管理上好ましくありません。短時間社員制度の導入を効果的に行うためにどのような手順で行えば良いか考えていきましょう。

1.導入する目的の明確化

各企業の人材活用上の課題によって、短時間正社員制度導入の目的は異なります。
社員それぞれのニーズや自社の人員構成、事業・人材活用戦略等を踏まえて、自社の現状及び将来の課題が、これらの課題のどれに当てはまるかを検討します。
社員のニーズを把握するには、社員を対象としてインタビューやアンケート調査を実施することも有効です。
制度導入の検討にあたっては、職場マネジメント上にどのような課題が生じるか検討、社内事情に応じた目的の具体化、それに沿った制度設計が重要です。
一方で、制度導入の目的を限定し過ぎると、特定の社員しか制度を利用できなくなることから、周囲の社員が制度利用者への協力に積極的になれなかったりする懸念もあるため、この点は留意することが望ましいでしょう。

2.職務内容や労働時間など期待する役割

制度導入に際して、まず、短時間正社員にどのような役割を期待するのかを明確にする必要があります。
ただし、短時間正社員に期待する役割を決定する上では、労働時間が短いことを考慮する必要があります。
たとえば、所定労働時間数に応じて、一定の役職に昇進できる昇進昇格ルート(キャリアパス)の整備や社員のニーズに応じた職務内容等を明確にします。 
対象者、目的別にみた短時間正社員に期待する役割の考え方

3.人事評価や賃金、教育訓練など労働条件

フルタイム正社員と同様の賞与・退職金制度の適用、社内研修などの能力開発機会の提供などが考えられます。
短時間正社員の昇進・昇格も、以下のような人事評価に基づいて、公正に決定することが重要です。

 

  • 成果目標による評価
  • 能力、行動等に対する評価

4.将来的にフルタイム正社員への復帰や転機

短時間正社員からフルタイム正社員への転換制度を設けることも、短時間正社員のモチベーションを高める上では効果的です。 
過去の成績評価が一定レベル以上の短時間正社員の中から、フルタイム正社員への登用を強く希望し、業務上必要な場合に残業が可能、上司の推薦があるなどの条件をクリアーした社員を選んで、将来の幹部候補生としてフルタイム正社員へ転換させます。
なお、フルタイム正社員に復帰・転換するかどうかは、短時間正社員制度の導入目的によって変わります。 
もちろん、短時間正社員とフルタイム正社員の間の垣根を低くし、希望すればいずれの側からも自由に転換ができるという制度にすることも可能です。
むしろ働き方改革が目指す柔軟な働き方の実現という点からは、その時その時の状況に応じて、社員が自由に転換できる制度とすることが望ましいでしょう。

 

短時間正社員制度を導入するときの注意点

短時間正社員であることを理由として、フルタイム正社員と異なった処遇(賃金など)とすることは許されません。
同じ仕事をしているのであれば、処遇もそれに見合った同等なものとする必要があるのです。

現状のパートタイム労働法(8条)でも、短時間労働者とフルタイム労働者との待遇格差について、「不合理と認められるものであってはならない」と定められています。

さらに今後、同一労働同一賃金原則が導入されると、フルタイム労働者との処遇格差は、短時間労働者に対する差別的取扱と判断され違法となります。

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短時間正社員制度が導入目的の達成に向けて円滑に運用され、根付いていくかどうかは、制度導入の際、制度への理解を、どこまで深められるかによって大きく変わってきます。

短時間正社員制度を導入しても、制度対象者・利用者、管理職、周囲の社員の理解が不足していると、制度が利用しにくくなり、円滑な運用が妨げられることが懸念されるため、短時間正社員制度を導入するにあたっては、それぞれの関係者にあった周知をしていく必要があります。

<関係者に周知していく内容>

「制度の対象者・利用者」に対して

  1. 制度導入の目的
  2. 制度内容
  3. 制度利用に当たっての留意点
    ・制度のメリット・デメリットやキャリア形成について考える必要性
    ・働き方の効率化
    ・管理職や周囲の社員との積極的なコミュニケーション
  4. 制度利用の際の事務手続き

「管理職」に対して

  1. 制度導入の目的
  2. 制度内容
  3. 制度利用前後の職場マネジメント上の留意点
    ・期待する役割に応じた仕事の配分
    ・職場単位での働き方の見直し
    ・適正な人事評価
  4. 制度利用の際の事務手続

「周囲の社員」に対して

  1. 制度導入の目的
  2. 制度内容

 

短時間正社員制度の今後の課題は人事管理

短時間正社員の中には、雇用の安定が目的で、バリバリと仕事をするよりも、むしろライフ優先で働きたいという社員もいます。
そのような社員にまで、本人の価値観とは異なるキャリアアップの道を一方的に押しつけることは好ましくないでしょう。

短時間正社員という制度がしっかりと根付くまでには時間がかかります。
有益な制度として確立させるため、運用上の課題について考えていきましょう。

<運用上の課題例>

1.短時間正社員の低評価

勤務時間が短いだけで公正な評価が行われないなど

2.短時間正社員のモチベーション低下

制度利用の長期化に伴い、キャリア形成の阻害など

 

課題解消のカギは管理する側の理解と改善、働く環境の整備

1.短時間正社員の低評価の解決方法

  • 人事部門:評価方法の運用確認、改善、管理職に周知と徹底
  • 管理職:評価方法の理解、社員とのコミュニケーションなど

2.短時間正社員のモチベーション低下の解決方法

  • 人事部門:認識の共有と環境の整備、管理職:必要な情報の提供と支援、利用社員:制度利用の思案
  • 管理職:制度利用者へのキャリア・プランについて考える上で必要な情報を提供、キャリア・プランの実現に向けた支援
  • 制度利用者:制度利用のメリット・デメリットの把握、利用方法の確認

短時間正社員制度を有益な制度にするためには、短時間正社員を仕事優先コースとライフ優先コースの2つに区分し、社員の価値観と意欲に応じて仕事内容や役割・責任、処遇を変えるなど検討しなければなりません。

いずれにせよ新しい試みを始めるときは、企業ごとに試行錯誤しながら自社に合った職務内容や勤怠管理などの制度構築を進めていく必要があります。

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