CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

昨今過重労働が原因となる大きな事件が発生し、社会に衝撃を与えています。

ある事件では、労災として認定された後、厚生労働省による強制捜査、当該企業及び幹部社員の書類送検が行われ、最終的には経営者が引責辞任するまでに至りました。
過重労働は、社員の心身の健康を損なうと同時に、会社の存続さえも揺るがしかねない問題であることが、あらためて浮き彫りになりました。
経営者や人事関係者は、過重労働が行われないように残業時間を削減していくことが求められています。ここでは、その考え方や具体的な取り組みについて説明します。

 

「月45時間」を超える残業は、過重労働ととらえられる

「過重労働」とは、一般的に、何時間ぐらいの残業を指すのでしょうか。
厚生労働省労働基準局長が発した通達「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準について」(改正基発0507第3号)では、疾病を発症させるリスクの観点から、過重労働となる残業時間の目安を次のように定めています。

  1. 発症前1ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること
  2. 発症前1ヶ月間におおむね100時間または発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること

つまり、残業時間が「月45時間」を超えると、疾病を発症させる可能性がある過重労働になり、「月100時間」を超えたり、「月80時間」を超える残業が続いたりすると、疾病を発症させるリスクが高い過重労働になるということです。
したがって、過重労働を防ぐためには、会社は、社員の残業時間が月45時間を超えないようにすること、それを超えてしまう場合には月80時間を超えないようにすることが必要です。
また、月100時間を超える残業については、過重労働防止の観点からは、原則として認めるべきではありません。
この「月45時間」という残業時間は、時間外労働に関する労使協定(36協定)を締結するときの「1ヶ月当たりの延長時間の限度」として設定されている時間と一致しています。
この点から考えても、「月45時間」という残業が、長時間労働かどうかを判断する一般的な基準になっていることが分かります。

 

残業削減は日常の勤怠管理の見直しから

月45時間を超える残業を行っている社員が多い会社は、早急に残業時間の削減を行うことが必要です。会社全体で、残業時間を削減するためには、経営者がそれを徹底的に行う姿勢を示すこと、社員一人ひとりが意識を変えることなどが不可欠ですが、それとあわせて、日常の勤怠管理を通じて、次のような取り組みを行っていくことも必要です。

1.本人及び上長に、日々の残業時間のチェックを義務づける
勤怠管理システム上で、本人及び上長が、日々の労働時間と当月の残業時間の累計を見ることができるようにして、原則として、毎日、それをチェックすることを義務付けます。
こうすれば、その月の残業が45時間を超えそうかどうかが早めに分かるので、本人が残業を少なくするように仕事を調整する、あるいは、上長がその社員の仕事を軽減して早く帰れるようにするなどの対応を行うことができます。
ある会社では、月の半ばで一定の残業時間を超えた場合は、本人と上長が、月後半の残業を減らす対応策を検討したうえで、「残業申請書」を人事部に提出することを義務付けました。
このルールを導入してから、その会社の残業時間は大幅に減少しています。
2.外回りの営業などは「直帰」を原則とし、外出先で「退社時刻」を打刻させる
外回りの営業、配送、訪問介護などの職種では、外出先での業務が終了した後、いったん会社に戻り事務作業を行ってから退社する、というパターンで仕事をしていることがあります。
このパターンでは、最後の訪問先から会社に戻るまでの移動時間も労働時間に含まれてしまうため、残業時間が多くなる傾向があります。
外出終了後の事務作業は、緊急のもの以外は翌日以降に行うことにして、外出先での用事が終了した時点で「業務終了」とし、会社に寄らずに帰宅(直帰)することを原則とすれば、これらの職種の残業時間は大幅に減ります。
ただし、このようなルールを作っても、「タイムカードに『退社』の打刻をしないと、1日の仕事が終わった感じがしない」と言う社員は、会社に戻ってきてしまいます。こういう社員に対しては、自分の携帯電話やスマホを使って、外出先で「退社」を打刻できるようにすると、安心して直帰するようになります。

 

過重労働に対する行政のチェックは、さらに厳しくなる

厚生労働省は、各都道府県の労働局に「過重労働特別監督監理官」を配置して、過重労働を行う会社に対する監督指導を強めています。今後、地域、業種、規模を問わず、労働基準監督署等からの過重労働に対するチェックは、ますます厳しくなることが予想されます。

「月45時間」を超える残業を行っている社員がいる会社は、働き方や勤怠管理システムの見直しなどを早急に行い、残業削減に取り組むことが必要です。