知らないと損する!経営に役立つトライアル雇用助成金のメリットと受給まで
せっかく採用したのにすぐ辞めてしまう、そんなお悩みありませんか。
採用後のミスマッチの防止や採用/離職コストの削減は、企業や人事担当者の大きな課題です。
そのような課題解決をサポートしてくれるトライアル雇用助成金という制度をご存知でしょうか。
もし活用すれば、入社前の選考だけでは見抜きにくい人材の適性などを見極めた上での本採用が可能となります。
また、離職に伴う時間や労力も減らせ、助成金も受給できるためコスト面でもメリットがあるでしょう。
今回は、トライアル雇用助成金の概要、メリットとデメリット、申請から受給までの流れを解説します。
トライアル雇用助成金とは
トライアル雇用助成金とは、就業経験の不足や長期ブランクなどを理由に就職が難しくなった人の就業救済措置として制定され、3ヶ月の就業試行により、企業と求職者の双方に、適正や能力を見極める機会を提供し、正規雇用のきっかけにしてもらうことを目的とした返済不要の支援金をもらえる制度のことです。
有期契約満了日において、企業・トライアル雇用対象者双方の合意があれば、その社員を正社員として雇用することも可能です。
また、トライアル雇用対象者にはもちろん賃金を支払わなければなりませんし、労働基準法も適用されます。
トライアル雇用助成金は、すべての求職者に適用されるわけではありません。
トライアル雇用には、「一般トライアルコース」と「障害者トライアルコース」があり、厚生労働省はそれぞれ一定の要件を設定しています。
紹介日時点で就職を希望しており、以下いずれかの用件に当てはまる人が対象です。
一般トライアルコース
安定的な就職が困難な人が対象です。
- 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
- 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている※1
- 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業
※2に就いていない期間が1年を超えている - 紹介日時点で、ニートやフリーター等
※3で45歳未満である - 就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する※4
※1 パート・アルバイトなどを含め、一切の就労をしていないこと
※2 期間の定めのない労働契約を締結し、1週間の所定労働時間が通常の求職者の所
定労働時間と同等であること
※3 安定した職業に就いていない方で、ハローワーク等において担当者制による個別
支援を受けている方
※4 生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇求職者、季節求職者、 中
国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者
障害者トライアルコース
「障害者の雇用の促進等に関する法律 第2条第1号」に定められた障害者が対象です。
- 就労経験のない職業に就くことを希望している
- 過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
- 離職している期間が6ヶ月を超えている
- 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
メリットとデメリット
トライアル雇用を利用することによる企業にとってのメリットとデメリットは次のとおりです。
メリット
求職者の適性や能力を見極めた上で、確実な正規雇用を行なうことができます。
本採用後のミスマッチが減ることは、企業にとっては労力的にもコスト的にも大きなメリットとなるでしょう。トライアル後の常用雇用は義務ではないので、期間が満了すれば自社意向の契約解除も比較的容易な制度です。
要件を満たせば助成金も支給されるため、採用コストを押さえつつ、人材採用や人材育成を充実させられます。
デメリット
トライアル雇用を利用するには、申請からトライアル雇用開始、さらに終了後に至るまで、書類処理が発生します。
それぞれの段階で、必ず対応しなければならない処理があるので、スケジュール調整や確認・管理が必要になるでしょう。また、トライアル雇用求人には未経験人材の応募も多く、教育や育成が長期になる可能性があります。
その体制を整えて対応していくことが必要です。
トライアル雇用に関する受給条件と支給額
種類別の受給条件や、助成金の支給額に関わるルールは次のとおりです。
一般トライアルコース
対象者一人あたり月額最大4万円、最長3ヶ月間受給できます。
若者雇用促進法に基づく認定事業主の場合は、対象者が35歳未満であれば、月額最大5万円、最長3ヶ月間です。
支給額は、就業予定日数に対する実働日数の割合で算出されます。このコースを利用する際の企業の受給条件の主なものをご紹介します。
- ハローワークや職業紹介業者の紹介を通して雇用を行なう
- 原則3ヶ月間のトライアル雇用を実施する
- 1週間の所定労働時間が社内求職者と同程度で、30時間以上である
- 過去6ヶ月以内での事業主都合の解雇がない
- 求職者名簿や賃金台帳などを労働基準法の規定に沿って管理している
- 過去に労働保険料の滞納がない
障害者トライアルコース
対象者一人あたり月額最大4万円、最長3ヶ月間受給できます。
精神障害者を初めて雇用する場合は、月額最大8万円、最長3ヶ月間です。
支給額は、就業予定日数に対する実働日数の割合で算出されます。このコースを利用する際の企業の受給条件の主なものをご紹介します。
- ハローワークや職業紹介業者の紹介を通して雇用を行なう
- 3ヶ月から12ヶ月間の短時間トライアル雇用を実施する
- 障害者総合支援法に基づく、就労継続支援事業を行っている
- 求職者が雇用トライアルを理解し、それによる雇い入れを望んでいる
- 障害者トライアル雇用期間は、雇用保険被保険者資格取得の届出を行なう
トライアル雇用助成金の手続きの流れ
トライアル雇用を利用し、助成金を受給するまでの手続きの流れは以下のとおりです。
1.ハローワークに求人を出す
ハローワークに求人を出す際に、「トライアル雇用求人」だということを伝えます。
その求人で一般募集も同時に行いたい場合は、「トライアル雇用併用求人」とします。
2.求職者に対して面接を行い採用する
ハローワークや職業紹介業者からの紹介を受け、書類ではなく必ず面接を行なった上でトライアル雇用として採用します。
対象者の雇用保険加入の手続きが必要です。
3.紹介を受けたハローワークに必要書類を提出する
採用したら、直ちに「トライアル雇用実施計画書」を作成します。
この計画書は、企業と対象者で話し合い、内容に合意しておくことが大切です。
トライアル雇用期間の開始から2週間以内に、紹介を受けたハローワークに提出します。
トライアル雇用期間が終了、または、期間中に常用雇用に移行した場合は、その翌日から2ヶ月以内に「トライアル雇用助成金支給申請書」の提出が必要です。
4.助成金が支給される
助成金は、トライアル雇用期間が終了したあとに支給されます。
要件や上記の手順や必要項目が満たされているかが審査された上で、3ヶ月分など該当支給額が一括で振り込まれる仕組みです。
注意事項としては、試行期間は原則3ヶ月ですが、対象労働者の自己都合離職等で3ヶ月未満の試用雇用となってしまった場合、支給申請期間もその分前倒しになります。
通常、3ヶ月のトライアル雇用から終了の2ヶ月後が申請期限ですが、このような場合、対象労働者の離職日から2ヶ月が申請期間となります。
まとめ
今回はトライアル雇用助成金について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
企業側、求職者側がお互いの理解を深めた上で働く意思を決定できるので、ミスマッチを減らし離職率を下げることができる制度です。
相互理解での雇用は、求職者に長く働いてもらうためにも大きな役割を担っています。
なおかつ助成金が支給されるのであれば、企業側にとってもお得な制度です。
トライアル雇用の求人と通常の雇用の求人を併用することもできますので、ぜひ活用してみてください。
【原稿執筆者】
社会保険労務士法人ユニヴィス 社会保険労務士
池田