CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

年次有給休暇(以下、有給休暇)のうち、消化しなかった分の日数は次年度に繰り越せることをご存知でしょうか。
今回は有給休暇の繰越について理解し、日本の有給休暇の取得率の実態と今後の課題を解説します。

 

有給休暇の繰越とは

労働基準法第39条に定めがある有給休暇ですが、この時効は2年とされています。
そのため、付与日から2年内であれば法律上付与される有給休暇は繰り越して使用することができます。

同じ会社で6年6か月勤務した場合、最大で1年に20労働日の有給休暇が自動的に発生します。
つまり、時効は2年ですので、繰り越される有給休暇は最大で40日です。
これ以上の有給休暇は累積されません。

なお、法律の範囲を超えて付与される有給休暇は、法律ではなく会社のルールにより規律されますので、繰越上限は会社のルールにより決まります。
ただし、「有給休暇の繰越はしないものとする」といったようなルールを就業規則に規定することは労働基準法に違反しているので、そのようなルールは無効となります。

>>有給休暇ハンドブック

 

新規取得と繰り越した有休ではどちらを先に消化するのか

有給休暇は労働者の権利です。
そのため、どの有給休暇権を行使するかは労働者の判断により決まります。
通常は時効消滅が迫っているものから使用するのが合理的意思といえますので、付与日の古いものから使用されていくと考えて構いません。

例えば、以下のようなパターンがあったとします。

2017年 有給休暇発生20日 有給休暇で消化した日数10日
2018年 有給休暇発生20日 有給休暇で消化した日数5日
2019年 有給休暇発生20日

この場合2019年に有給休暇は何日あるでしょうか。
繰越は2年までですので、2017年分は残っていません。
2018年分は未消化の15日が残っています。
2019年にも20日が発生しています。
従って、20日+15日=35日が2019年に残っている有給休暇日数です。

 

有給休暇取得率の現状

ただ、色々な理由で有給休暇を繰り越しても、実際は消化できない人が多いのが現状です。
以下の厚生労働省による調査の労働者1人平均年次有給休暇の取得状況をみても明らかです。
日本の有給休暇取得率は、世界で見ても最低だといわれるほどの数値になっています。

平成30年度調べのデータを見るとわかるように、付与日数はおよそ18日前後なのに対して、実際に取得した日数は10日以下と取得率は50%を切っています。
大手企業の一部は50%を超えていますが、それでもなお取得日数は付与日数の半分程度と取得率の低さがよく分かります。

有給休暇を利用しない理由はそれぞれですが、使わずに時効を迎えて切り捨てている人が多いのが課題です。

 

有給休暇の繰越時効まで消化できない理由

有給休暇の使い方は基本的に自由です。
所用があるとき、体調不良で仕事を休むときなど、様々な使い方ができるので、労働者にとってはありがたい制度です。
また半日だけ有給休暇を取得する方法もあり、柔軟な働き方を可能としますが、それなのになぜ取得率が低いのでしょうか。

日本の有休取得率は非常に低いといわれていますが、その理由は以下の調査結果から実に真面目な日本人らしさがにじみ出ていることが分かります。

※独立行政法人労働政策研究・研修機構【年次有給休暇をとり残す理由(n=2003)〔正社員調査〕】より引用

基本は毎日仕事へ行くのが当たり前と考えている人が多く、病気や急な用事の時に利用できるようにと考えている人が64.6%と大きな割合を占めています。
そのほかにも、休むと職場の他の人に迷惑になるからが60.7%、仕事量が多すぎて休んでいる余裕がないからが52.7%と、休むに休めない事情に悩まされているようです。

>>年次有給休暇の取得に関する調査

 

有給休暇の取得率を上げるためには

有給休暇取得によりリフレッシュした状態で働き続ける環境を整えることはチームのパフォーマンス向上に役立ち、経営にとってもプラスの影響を与えます。

経営者、人事、管理職からよくある声として、
「どれだけ有給休暇の取得を促しても、社員が取ってくれないからどうしようもない」
「仕事をしたいと言う社員の熱意に水を差すわけにはいかない」
「特に予定もないから仕事をすると言っているので…」
という意見がありますが、本当にその見方が正しい認識なのか、今一度、確認する必要があるかもしれません。
そうすることで、これまで気が付かなかった会社個別の「有給休暇が取得しづらい理由」があぶり出されるかもしれません。

有給休暇取得を一層推進するには、大半の会社では「業務と人員の調整」と「有休を権利として当然に取得するという文化の醸成」の両面からの施策が必要だと思われますが、結局は、個々の会社内でじっくり話し合い、課題を見つけて、地道に粘り強く一つ一つ解決していくしかないのではないかと思います。

 

まとめ

今回は有給休暇が付与されてから翌年度に持ち越すことができる「有給休暇の繰越」について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

実際に有給休暇を利用するにしても、諸々の理由が絡んでなかなか取得できない人が多いという日本の労働社会の現状と課題を知っていただけたかと思います。
有給休暇取得率を上げることで、働くときはバリバリ働く、休む時はしっかり休む、そのメリハリこそが今後の働き方としては、時代にマッチしており、良い結果を生み出すと確信しています。
休みやすい雰囲気、体制づくりが、きっと会社の業績向上と社員の成長と幸せに繋がると思います。

【原稿執筆者】
社会保険労務士法人ユニヴィス 社会保険労務士
池田