CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

「特別な理由がないと有休取得が許可されない。」「私用で有休を取得すると小言を言われる。」といった労働者の方の悩みを聞くことがあります。
しかしこのような会社の対応は問題があります。
なぜならば、有給休暇を取得することは労働者の権利であり、いかなる理由であれ、自由に取得することができるからです。
ただし、取得の拒否はできませんが、有休の日をずらしてもらう権利(時季変更権)は会社にあります。
そこで今回は、有休取得のプロセスや時季変更権を使える場合などについて考えたいと思います。

 

そもそも有給休暇とは?

有給休暇とは労働基準法によって定められた、労働者の権利です。
入社後半年を経過しており、かつ出勤率8割を超える労働者に対しては、必ず有給休暇を付与しなければいけません。
有給休暇は正社員だけでなく、上記条件に該当する労働者であれば、全ての労働者に対して、与えなければいけないことになっています。
また有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをすることは禁止されています。
現在、有給休暇の消化率は50%程度と言われていますが、消化できなかった有休は、翌年に繰り越されます。
ただし、発生から2年間経過した有休は時効により消滅します。
消滅してしまうならばいっそ買い取ってほしいとの要望も聞くことがありますが、有休の買い取りは原則として許されません。
そもそも有給休暇が付与される趣旨は、労働が免除されることにより心身のリフレッシュを図ることにあり、実際に休みを取ることが大切であるからです。
ただし、退職時に結果的に残ってしまった有給休暇に対し、残日数に応じた金銭を給付することは差し支えないと考えられています。
なお2019年4月からは、全ての企業において、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、有給休暇の日数のうち年5日については、会社が時季を指定して取得させることが必要となります。
この辺りの法改正について詳しくは、弁護士や社会保険労務士に問い合わせて、回答を得るのもよいかもしれません。

 

有給休暇の取得理由を問うことは違法か?

有休取得のプロセスとして、労働者が有休申請書を提出するのが一般的だと思いますが、そこに取得理由の項目を設けている場合があります。
しかし会社は、取得理由がなんであれ、有休申請を拒否することはできません。
有給休暇の取得は労働者の権利である以上、「いつ」「どんな理由で」取得するかは、労働者が自由に決められるからです。
ただし有休の取得理由を問うこと、それ自体まで違法と解されているわけではありません。
後述のように会社には時季変更権がありますが、取得理由が重大でなければ時季を変更してもらうよう要請する、という対応も実務的にはあり得るところだと思います。
とはいえ、取得理由を問うようにしていると「重要な理由でなければ有休申請をしづらい。」と労働者に思わせてしまう場合があります。
実際有休に関するアンケートなどを見ると、有休を取得申請できない理由の上位は、「有休をよしとしない会社の雰囲気」が挙げられています。
「猫が病気だから」 「つきあっていた彼、彼女にふられたから」 「バーゲンに行きたいから」 いろいろな理由が書かれた時に、有休申請を受理する人が、自分の価値判断で「そんな理由で有休とるの?」といった態度を取ったり、陰口を言ったりということは、理由を問えない以上不適切な対応といえます。
このような対応をすることがないよう、会社としてもよくよく注意する必要があります。
特に最近ではSNSなどを通じてそういった情報が出回るため、会社の名を失墜させることにもなりかねません。
一方でそういったリスクを避けるため、まずは理由を問うのをやめるというのも一つの手であると思います。

 

時季変更権とは?

前述のように、会社は有休申請を拒否することはできませんが、労働者の希望した日にちや時間をずらしてもらうことはできます。
これを時季変更権といいます。
ですが会社がいつでも好きなようにずらしてもらうことができるわけではありません。
労働者の指定した日時に有給休暇を与えると、「事業の正常な運営が妨げられる場合」にのみ時季変更権を行使することができます。
どんな場合に、「事業の正常な運営が妨げられる」のか、明確な基準はありません。 多くの労働者が同時に有休を申請したような場合はこれに当たると言われていますが、一方で単に業務が多忙なだけではこれに当たらないとされます。
ですが、どうしても時期によって多忙なときがあり、そのような時に有休を取得されると困る、というのが会社の本音だと思います。
この場合、「今はどうしても忙しいから、時季を変えてもらえないか。」と労働者にお願いし、労働者が「それならば別の日でも大丈夫。」と納得した上で変えてもらうのならば、問題ないと考えられます。
労働者としてもどうしてもその日でなければならない場合は別として、普段からしっかりと有休を取りやすい環境を整えていれば、そのようなお願いにも納得してもらいやすいのではないかと思います。
その場合は、労働者の方の希望を聞きながら、速やかに代替日を決められるとよいでしょう。