CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

使用者が労働時間を適切に管理する責務について、具体的に義務として定めた法令は、現状はありません。
しかし、労働基準法では、時間外労働や休日、深夜労働に関する規定がされているので、企業側が従業員の始業と終業時間、働いている時間を正しく把握・管理することは、前提条件という形になっています。
また、平成29年9月の衆議院の解散にともない法案の決議は見送られてしまいましたが、過重な労働により脳・心臓疾患等の発症のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、「使用者による労働時間把握義務」を示した労働衛生法施行規則の改正が行わる予定でした。

「働き方改革」を軸として、勤務時間を把握することは、今後の法律上の義務化も視野にいれて、ますます重要なものとなってきています。

 

法律で定義!勤怠管理における労働時間に関する義務とは?

労働者が労働すべき時間について、使用者と労働者の間の合意で自由に決めてよいことにすると、力関係で優位に立つ使用者の方が労働者にとって不利益な契約を押し付ける危険性が高いため、労働者保護の観点から労働基準法という法律で上限が定められています。

労働基準法第32条では、1週間に40時間、1日8時間を超える労働を禁止しています。これを超えて勤務する場合は時間外労働となり、労働基準法第36条に基づいて労働の代表者と協定を締結し、さらに労働基準監督署に届出をする義務があります。
届出をしない状態で時間外労働をさせた場合、労働基準法第119条の6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が適用されますが、通常、労働基準監督署から事業主宛に「是正勧告」が出され、改善へ向けての措置を求められる事になります。
処罰対象者は使用者のみですが、これは、事業主だけではなく、残業可否に関する権限を持っているライン上の上司等も法律上は使用者とみなされますので、併せて罰則の適用がなされます。

また、使用者は、労働基準法第108条及び同法施行規則第54条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければなりません。もし、賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や故意に虚偽の労働時間数を記入した場合は、労働基準法120条に基づき、30万円以下の罰金に処せられます。

これらの労働時間の記録に関する書類(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録関する書類)については、労働基準法第109条に基づき、3年間保存しなければならないとされています。

 

使用者による労働時間の把握の責務とは?

厚生労働省は、平成29年1月20日に策定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で、「使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有している」として、具体的な措置を明らかにしています。

  1. 始業・終業時刻の確認及び記録
  2. 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
  3. 自己申告制により始業・終業時刻の確認および記録を行う場合の措置
  4. 賃金台帳の適正な調製
  5. 労働時間の記録に関する書類の保存
  6. 労働時間を管理する者の職務
  7. 労働時間等設定改善委員会等の活用

労働者本人の自己申告制に基づいて労働時間を管理している場合に、労働者によっては、上司の指示による残業であっても、適正な残業時間を申告しないで、労働者自身が不利益を自ら受け入れているというような状況を見受ける場合があります。
会社としても正確な時間を把握できないために、労働者が申告をしていない残業時間に関する残業代は支払わなくても会社は問題ない・・・という訳にはいきません。客観的にみて労働時間と認識できる残業代(割増賃金)には、支払い義務が生じます。

労務を巡って従業員の不満や悩みによって、多様化する相談やトラブルの発生を防ぐために、人事担当者は気をつけて対応すべきでしょう。

 

従業員を守る!長時間労働を予防する義務とは?

日本の労働時間は、世界と比べてみると、長時間労働なのに生産性が低いという調査結果が2015年のOECD(経済協力開発機構)から読み解くことができます。

日本の年間平均労働時間は、1,719時間で、日本人一人あたりのGDP(1時間当たりの国内総生産)は39.5ドルに対し、ドイツは 1,371時間でGDPは59.5ドル、フランスは1,482時間でGDPは60.8ドルと比べると日本の生産性の低さが歴然としています。
また、先進諸国の中で最も労働時間が長いとされるアメリカの労働時間は、1,790時間と日本より長時間労働ですが、GDPに関していえば、62.9ドルとなっています。
(出典:OECD Database, hours worked, accessed on 19 September 2016.)

長時間労働が度重なり、睡眠時間不足の深刻度が増すと、その結果、メンタルヘルス不調者の発生頻度が多くなる傾向となります。過重労働による過度な心理的負担がストレスとなった場合、過労死や過労自殺の割合も高くなることが知られています。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務があり、「生命、身体等の安全」には、心の健康(精神的な健康)も含まれることとされています。

日本の労働時間は、世界と比べてみると、長時間労働なのに生産性が低いという調査結果が2015年のOECD(経済協力開発機構)から読み解くことができます。

 

事業場におけるメンタルヘルス対策として、「積極的な健康の保持増進=ヘルス・プロモーション」及び「仕事による健康障害の防止=ヘルス・プロテクション」という2つの概念があります。

ヘルス・プロモーションでは、心の健康についての正しい知識、ストレスへの気づきと対処方法、人間関係の手法等についての研修と、事業場内外の相談体制の整備などが中心となります。
ヘルス・プロテクションでは、労働時間管理、人事労務管理、仕事の方法、評価制度など労働者の心の健康に影響を与えうる事業場内の事項(職場環境等)についての問題を点検し、その改善を図ることが中心となります。正しく勤怠を記録し、長時間労働者を把握することは、会社の安全配慮義務を果たす上でも必須要件と言えるでしょう。

 

その長時間労働は「過重労働」の可能性も・・・

「月45時間」を超える残業は、疾病を発症させる可能性がある過重労働になり、さらに、「月80時間」を超える残業は、疾病を発症させるリスクが高い過重労働になります。

時間外労働に関する労使協定(36協定)を締結するときの「1ヶ月当たりの延長時間の限度」としての基準が「月45時間」ですので、長時間労働かどうかを判断する一般的な目安となります。

長時間労働を防止するための残業削減には、日々の残業時間のチェックを行うことが有効な手段となり、そのためには、勤怠管理クラウドシステムのような、本人及び上長が簡単に自分の残業チェックができる仕組みづくりが必要となってきます。

現在、中小事業主に猶予されている1ヶ月60時間を超える時間外労働の割増賃金率5割支給については、平成34年4月1日施行とされています。
残業削減対策についても、今から、対策を検討していく必要があると言えます。

以前のコラムに『社会問題になっている「過重労働」を防ぐために勤怠管理を使ってできる残業削減』がありますので、よろしければ、ご覧ください。