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「試用期間なら簡単に解雇できる」は誤解です!

「試用期間なら簡単に解雇できる」は誤解です!

「試用期間満了後に本採用を拒否することは解雇ではない。」「試用期間ならば簡単に解雇できる。」といったように思われている方が時々いらっしゃいますが、これは誤解です。
本採用の見送りはあくまでも「解雇」であり、解雇である以上そう簡単には認められません。
そこで今回は、試用期間の法的性質、どんな場合に本採用の見送りが認められるか、その際の注意点などについてお伝えしたいと思います。

 

試用期間とは?

多くの企業では、新しく入社した社員に対して、「試用期間」を設けています。
2014年の調査では、約87%の企業が試用期間制度を導入しているとされています。

試用期間は、企業側が従業員の適正を判断し、今後もその従業員を雇用し続けられるかを試すための期間として設けられるものです。
また実際上は、従業員側も、この職場で働き続けられるかを試すという側面もあるかもしれません。

試用期間=お試しの期間ということで、試用期間満了時ならば簡単に辞めてもらうことができる、とお考えの経営者の方や人事担当者の方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。
試用期間を法律的な言葉で表すと「解約権留保付労働契約」となります。
つまり、雇用契約の効力は発生するものの、従業員が不適格であると企業側が判断した場合には契約を解約(解雇)することができるということになります。
やはり1度雇用している以上、期間満了時に辞めてもらうこと(本採用の見送り)は「解雇」に該当します。
解雇である以上、本採用を見送る合理的な理由が求められます。
確かに、本採用締結後の解雇よりは比較的広く解雇事由が認められるため、そこが試用期間を設ける企業側のメリットではあります。
とはいえ、そう簡単に本採用の見送りは認められないため、試用期間があるからといって安易に採用するのは厳禁ということになります。

また試用期間については、「試用期間があること」「その期間」などについて従業員によく説明する必要があります。
説明が不十分であると、後からトラブルになり、「試用期間が存在したとは認められない。」などと判断されてしまう危険性もあるため、ご注意下さい。

 

どんな場合に本採用の見送りが認められるか

それではどんな場合に本採用の見送りが認められるでしょうか。
一言で言えば、本採用を見送ることに、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当とされる場合にのみ許されます。
例えば

  • 遅刻欠勤を繰り返すなどの勤怠不良がある
  • 仕事経験の有無などについての経歴詐称がある

といったような場合は、見送りが認められやすいでしょう。
ただし、勤怠不良であればしっかりと注意、指導を繰り返したことが必要となります。
また、注意、指導の記録は証拠として残すべきでしょう。
能力不足という理由も認められないわけではありませんが、しっかりと教育をしたことが求められるのはもちろんのこと、場合によっては、配置転換をしたあるいは転換を検討したが不可能だったことなどが求められることもあり得ます。

一方で、

  • 仕事に向いていない
  • 熱意が感じられない
  • 自社の雰囲気に合わない

といった漠然とした理由では、合理的な理由とは認められないことが考えられますので、ご注意ください。

結局のところ、どのような場合に合理的な理由と認められるかは、ケースバイケースとなるため、不安があるときは弁護士などに一度相談されるのがよいかもしれません。

 

試用期間の適切な長さ、就業規則への定め

試用期間の長さについては、法律で定めがあるわけではありませんが、企業が完全に自由に決められるわけでもありません。
前述のように試用期間中は、従業員からすると不安定な立場に置かれることから、あまりに長い試用期間は許されないことがあります。
2014年の調査では、3ヶ月程度の試用期間を設ける企業が約66%と圧倒的に多く、6ヶ月程度がそれに次いで約18%となっています。
基本的に、試用期間は3ヶ月程度で、適正を判断するのが難しいような業種、仕事であっても6ヶ月程度にしておくのがよいでしょう。

また試用期間を設ける場合は、何らかの規程にその定めを設けなければいけません。
ほとんどの場合は、就業規則に「試用期間が有ること」「その期間」などといったことを規定することになります。
場合によっては、「試用期間の延長や短縮の有無」といったことも規定することがあります。
>>従業員の採用と退職に関する実態調査

 

本採用を見送る際の注意点

前述したとおり、本採用の見送り=解雇に当たります。
使用者が労働者を解雇する場合には,30日以上前に予告しなければなりません。
予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。
例えば、15日前に予告した場合は、不足分である15日分以上の平均賃金を支払う必要があります。 これは本採用を見送る際でも同様に、必要となってきます。
ただし、試用期間の場合は、例外規定が設けられていて、試用期間開始後14日までに解雇を行う際は、解雇予告手当は不要とされています。
とはいえ、雇い始めて14日間というのは、従業員の資質を見る期間としてはあまりに短いため、余程のことがない限り、14日以内に解雇するということはないと思います。
したがって、「本採用の見送りをする際は、基本的に解雇予告手当が必要である」という点にご注意いただければと思います。
>>労働契約の終了に関するルール|厚生労働省