高齢者を活用して人手不足を改善!高齢者の働き方や支援、会社が高齢者雇用する際の注意点を解説します!
少子高齢化社会による人口減少が、日本の企業の人手不足に深刻な影響を及ぼしています。
2017年7月に日本商工会議所が発表した「人手不足等への対応に関する調査」では、人員の過不足状況について、全体の6割以上の企業で「不足している」と回答しています。
企業では、経営が回らなくなり「人手不足倒産」と呼ばれる現象も起きてきています。
国や自治体では、高齢者を労働者として企業で雇用し人手不足解消につなげるため、高齢者専用の求人サイトコーナーを作ったり、高年齢者を雇用する際に受給できる助成金制度を導入するなどの後押しをしています。
このコラムでは、高齢者の概念、高齢者雇用の現状や、企業が高齢者を雇用する場合に注意すべき点を解説します。
日本の高齢者
一般的に高齢者というと、暦年齢65歳以上の方と定義されています。
我が国の総人口は、平成28(2016)年10月1日現在で、1億2,693万人。
そのうち、65歳以上の高齢者人口は、3,459万人で総人口に占める割合は、27.3%、2060年には65歳以上の人の比率が40%にもなると予想されています。
2016年の日本人の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳となり、70年前の1947年の平均寿命が男性は50歳、女性は54歳だったことを考えると、70年の間に30歳以上も長生きになっています。
現在、医療の進展や生活環境の改善により、10年前に比べ身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っているという調査データもあります。
65~74 歳の前期高齢者においては、心身の健康が保たれ、活発な社会活動が可能な人が大多数を占めており、意識調査の結果でも、社会一般においても65歳以上を高齢者とすることに否定的な意見が強くなっています。
個人差はあるとしても、高齢者の定義で65歳を起とすることが現状に合わない状況が生じています。
2017年1月に日本老年学会で、「高齢者」を75歳以上に見直すよう求める提言が発表され、内閣府の調査でも、70歳以上あるいは75歳以上を高齢者と考える意見が多い結果となっています。
高齢者の定義が変わった場合、現在、原則65歳とされている公的年金の支給開始年齢が、さらに後ろ倒しになるという可能性も起こりえる話なのではないでしょうか。
高齢者雇用は、どのような状況なのか?
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では、65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じるよう義務付けています。
平成29年10月に厚生労働省から公表された「平成29年の高年齢者の雇用状況」での、調査対象156,113社の回答は以下のようになっています。
「定年制の廃止及び65歳以上定年」の企業数は30,656社(対前年差2,115社増加)、割合は19.6%。 そのうち、定年制の廃止企業は4,064社で割合は2.6%、65歳以上定年企業は26,592社で15.3%となっています。
「希望者全員を対象とする 65 歳以上の継続雇用制度」を導入している企業は、87,425 社で70.0% (同 1.4ポイント増加)、そのうち、66歳以上まで働くことを希望する者の継続雇用制度を導入企業は、8,895社(同1,451社増加 )で割合は5.7%となっています。
「70歳以上まで働ける企業」は35,276社で、前年から2,798社増加し、その割合は22.6%です。
人手不足を背景として、高年齢者雇用安定法が求める65歳という壁を超えて、雇用を確保する企業が増えている状況となっています。
平成28年6月に独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した「高年齢者の雇用に関する企業への調査」では、60代前半層(60歳以上64歳以下)の継続雇用者の雇用形態は、60.7%が「嘱託・契約社員」、34.2%が「正社員」です。
仕事内容について、39.5%が「定年前(60歳頃)とまったく同じ仕事」、40.5%が「定年前(60歳頃)と同じ仕事であるが、責任の重さが変わる」となっています。
60代前半の年収の6割近くは200万円から500万円の間に該当しています。
賃金の原資が限られており、高年齢者の賃金が高いままだと現役世代の賃金が下がるので、高年齢者の賃金を下げても構わないといった、高年齢者の雇用確保、あるいは現役世代の賃金水準の維持を図るために高年齢者の賃金を調整してもよいと考える企業がそれぞれ3割前後あります。
高齢者を雇用する際に、注意する点とは?
高齢者の場合、体力や健康状態の問題が就業のネックにならないか、肉体的に負担の少ない仕事に配置することや、加齢に伴う労災事故(転倒や墜落、転落など)の発生に注意する必要があります。
60歳以降の継続雇用で再雇用後の賃金低下が就業意欲を失わせているという議論や、定年前と同じ業務であるにも関わらず、再雇用後に有期雇用契約の嘱託社員のトラック運転手が不当にさげられたのは、おかしいと会社を訴えたケースもおきています。
それとは別に、年金の受給額に合わせて、正社員を選択せずに、短時間のパート・アルバイトで週に数日だけ、短時間で勤務したいという生活費全額を働いて稼ぐ必要がない高齢就業希望者にとっては、ワークシェアリングなどの柔軟な勤務の選択肢を用意する必要があるでしょう。
高齢者雇用を考える企業が把握しておきたい点として、以下が考えられます。
企業から見た高齢者の就業の自由度
定年前に比べての勤務時間、勤務日数、残業時間の変化(現実的には短くなる)による時間的拘束性
期待する役割
①担当する仕事の内容・範囲、②職責(責任の重さ)、③期待する仕事の成果、④配置転換の頻度など
成果への期待
成果を期待する場合、成果責任を考慮した上での人事評価の実施、また、その内容
新規で高齢者を雇用する場合は、企業が期待する仕事と高齢者が希望する仕事のミスマッチ(求人と求職のミスマッチ)に気を付ける必要があります。
長年プライドを持って働いてきた結果として、磨いてきたスキルを生かして、今までの価値観のもとで働きたいという思いが強く、新しい仕事になかなか適応できないということが起こる可能性が考えられます。
高齢者の雇用を促進するには?
高齢者の継続雇用や新規雇用を促進していくためには、ワークライフバランスを考慮しつつ、短時間勤務やインターネットを活用した在宅勤務、また、報酬を勤務時間だけでなく、成果評価で決定する仕組みも導入するといった勤務形態の多様性や柔軟性を持てば、高齢者の経験と能力を活かすことができるのではないでしょうか。
国では、平成29年度の助成金として、60歳以上の高年齢者をハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、継続して雇用する労働者等として雇い入れる事業主に対して、60万円が助成される「特定求職者雇用開発助成金(I 特定就職困難者コース)」や、65歳以上の離職者を雇い入れることに対して助成を行う「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」を実施し、高齢者の雇用機会の増大を図っています。
2025年には、公的年金の支給開始年齢65歳への引き上げが完全に完了するタイミングでもあり、バブル世代と呼ばれる人口のボリュームが多い労働者が60歳に突入してきます。
高齢者雇用の活用について、真剣に考えなくてはいけない時期に入っていると言えます。
高齢者の勤怠管理にも、複雑な機能がなく、ボタンが大きく見やすい、勤怠管理クラウドサービス「CLOUZA」の打刻機能をおススメします。