待機児童問題解消のためには、保育士さんの働き方改革が必要!!
平成30年4月11日に厚生労働省から、昨年10月時点で認可保育施設に入れない待機児童が、全国に5万5433人であったとの発表がされました。
これは、前年同時期より約8千人多くなっており、昨年4月の2万6081人と比べると2倍以上増加しています。
平成29年10月時点の保育園等の待機児童数の状況について
都道府県別では、東京が最多の1万2469人で、全体の約22%を占め、次いで神奈川4411人、埼玉4263人、沖縄3960人、大阪3922人、千葉3664人、兵庫3300人など、都市部に集中する傾向が続いています。
東京では、23区の待機児童数ランキング情報をWEBで公開しています。
23区の保育園比較(待機児童数・認証補助・病児保育)
少子化が進んで子ども数も少なくなってきているのに、待機児童が増えている原因のひとつとして、保育士不足の問題があります。
憧れの職業と言われながら、実際には過重な労働や低賃金、休みが取りづらい等の理由から、資格を持っていても保育士の成り手が少ないこともあり、慢性的に不足している状況です。
今回は、保育士の勤務について取り上げながら、保育士の働き方改革を考えます。
保育士の仕事は、低賃金で重労働!?
保育士の仕事は、乳児から小学校就学までの幼児を保育することですが、子どもと遊んでいる時間だけが仕事というわけではありません。
朝は、 出勤後に開園の準備の部屋の掃除や換気、スケジュール確認、朝礼などを済ませ、開園の時間になったら子どもたちを迎え入れ、出席確認、体操、自由遊びや散歩などをプログラムに沿って行います。
昼は、手洗いやうがいなどを子ども達に促した後、お昼ご飯を子どもたちの様子を見ながら一緒に食事をとります。
昼食を食べ終わったら後片付けを行い、子どもたちに歯磨きと排せつなどをさせてから、布団を敷いてお昼寝の準備を行い、子どもたちが布団に入ったら、絵本などを読み聞かせてお昼寝をさせます。
子どもたちが寝ている間に、会議や連絡帳への諸連絡記入や休憩を取ります。
お昼寝が終わると、夕方まで、子どもたちを室内や園内で遊ばせ、保護者のお迎えを待ち、保護者が来た際に連絡帳を渡し、その日の様子や連絡事項を伝えます。
子どもたちを見送った後は、園内の掃除・片付け、戸締まりをしますが、他にも、明日の準備、保育計画書の作成、運動会やお遊戯会などの行事前は、衣装や小道具準備など普段の仕事に加えてやるべき仕事が増えるため、特に忙しくなり、残業が必然的に発生してしまいます。
終わらなかった場合は、仕事を自宅に持ち帰って行うなどという保育士の方も多く見受けられ、時間的にもハードな仕事だといえます。
平成30年2月に発表された平成29年賃金構造基本統計調査の「職種・性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」によると、保育士(女性)の全国平均月額給与は228,200円で、ボーナスは653,800円で年収に換算すると、3,392,200円、平均年齢は36.1歳、勤続年数平均は7.6年ですので、保育士は離職率がいため、長く勤務する人が少ないことが分かります。
※この調査では、公立保育園に勤務する保育士は、公務員となるので調査対象外となっています。
保育士の勤務時間は?
保育園等の開所時間は、一般的に朝8時から夜20時までのところが多いようですが、各保育園等により教育方針、保育環境が異なるため、開所時間も様々です。
平成29年6月に全国保育協議会からの「会員の実態調査 報告書2016」によると、平日の平均開所時間は11.7 時間であり、土曜日も開所する施設は97.7%となっています。
保護者のニーズに応えるために、早朝保育や延長保育で夜22時ごろまで預かってくれるような保育園や、深夜から朝方まで預かってくれるような保育園等もあります。
延長保育や夜間保育に合わせて、早番・日勤・遅番等のシフト勤務の組み合わせの勤務を行い、休日は、基本的に土曜日、日曜日、祝日で、週休2日制を導入している園は多いものの、土曜日や日曜日に保育を行う園もあるため、お休みは平日となるようなこともあります。
愛知県内の公立、私立の認可保育所などで働く保育士、園長らを対象に実施された「保育労働実態調査」では、月の時間外労働時間は平均18.9時間なのに対し、残業手当は同4.2時間分しか支払われず、平均で14時間以上のサービス残業をしており、基幹的業務の時間外労働、未払い残業が常態化している結果となっていました。
保育園等を運営する経営者が考えるべき、働き方改革は?
保育の仕事の中でも、子どもと接する時間は大切なものですから、単に効率を追求して時間を短縮するような考え方は馴染みませんが、経営者として保育士が長時間の残業をしているかどうかという問題意識を持つ必要があるでしょう。
勤務時間の管理が紙の出勤簿に出勤した日に押印するだけでは、どのぐらいの残業をしているのか分からず、業務の効率化をどのように図っていくのかさえも不明なままとなる可能性が高くなります。
子どもの年齢、人数に合わせた保育士の必要配置基準は、職員のシフトを過去のシフトやあらかじめ登録したシフトパターンから簡単に設定できる勤怠システムの導入が保育士の働き方を効率化するための手助けとなります。
現場の保育業務にもっと力を注げるように、正しい労働時間の把握、保育士以外の事務処理等を人の配置やITC化で事務負担の軽減を図り、保育士の時間外労働による長時間労働の是正対策を図ることで、が可能になってくると思います。
長時間の残業が必要なものなのかどうかを保育園等の経営者や管理者だけでなく職員も一緒に考え、意識を変えていくことも必要なのではないでしょうか。
保育士の柔軟な働き方への環境整備も必要
保育士の雇用形態をそれぞれの保育士の生活環境の変化によって選択できるようにパート、短時間正社員、正社員に設定できるようにするという方法もあります。
結婚を機に正社員からパートへ、子どもの手が離れたのでパートから短時間正社員へ、親の介護のために正社員から短時間正社員へというケースを想定することで働き方に柔軟に対応できます。
また、成長記録の記入やお便り、保育計画の作成、制作の準備などの事務仕事をフルタイムでは働けない方に割り振り、在宅勤務で対応してもらうことも方法のひとつだと言えるでしょう。
国は、一定の要件のもとに保育園などの施設に対し、職員の賃金を上昇させるための給付を市町村から行う保育士の処遇改善等加算を導入し、保育士の確保・離職防止を行っています。
保育園等の施設は認定を受けるための書類を届け出し、保育士に対して処遇改善手当を支給することで待遇改善し、働きやすさを整備していくことができます。
保育士が離職を考えずに長く安定して働くには、肉体的・精神的に疲弊しないで、じっくりと子どもに向き合う時間的・精神的余裕が持ち、適正な待遇を整え、良い保育環境をつくることが定着に繋がっていきます。
それがひいては、待機児童問題を解消する一歩となっていくのはないでしょうか。