CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

最近、「同一労働同一賃金」というテーマが、働き方改革でクローズアップされています。「同一労働同一賃金」とは、同じ仕事をしているのであれば、同じ賃金を支払うべきであるというシンプルな考え方です。
しかしいざ実践しようとすると、いろいろと困難な状況にぶつかるようです。詳しく見ていきましょう。

 

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金は、同じ仕事についているのであれば同額の賃金を支払うべきであるという考え方です。
たとえば工場の生産ラインで同じ製品の組み立てを担当している社員であれば、正社員であろうがパートタイマーであろうが同じ賃金になるということです。

今回導入される同一労働同一賃金という考え方は、ヨーロッパの制度(パートタイム労働指令、指令とはEU加盟国を拘束するもので、EU加盟国は指令にもとづき国内法を整備することになっている)を参考にしたものと言われています。

ヨーロッパはジョブ(職務、仕事)単位で賃金が決まっているので、同じジョブ(仕事)を担当しているのにもかかわらず賃金に差があるということは、そこには何らかの差別意図が働いていると考えられています。
とりわけ正社員とパートタイマーという雇用形態の違いにともなう異別取り扱いは、パートタイム労働指令で禁止されており、賃金格差は違法となります。

違法ということは、そのような取り扱いがされたとしても、取り扱い自体が無効になり、パートタイマーの賃金額が正社員の賃金額と同水準に修正されるということです。

話しを日本に戻すと、国内で今日的な問題となっているのは、正社員と非正規労働者(パートタイマー、契約社員、派遣社員など)との間の賃金格差です。

かつては、非正規労働者の多くは家計補助的に働く専業主婦でした。
そのため主婦の賃金が多少低くとも、正社員である夫の賃金が高かったので世帯全体で考えた場合、あまり大きな問題にはなりませんでした。

しかし、非正規労働者が雇用者の4割を占めるような今日的な状況になると話は違ってきます。非正規労働者自体が家計の主たる稼ぎ手になることもあり、非正規労働者の低賃金待遇は社会問題化しました。

以上から分かるように、今回の働き方改革で導入される「同一労働同一賃金」は、非正規問題対策なのです。
あわせて非正規労働者の賃金を改善し、消費活動を増やすことで、経済全体の活性化につなげることも狙いです。

 

同一労働同一賃金政策が求めているもの

同一労働同一賃金は、正規・非正規間の待遇差の解消に向けた取り組みですが、「均衡処遇」だけではなく「均等処遇」まで求められている点が、これまでとは異なります。
少し補足しますと、均衡処遇とは、「パートタイマーも正社員と同じような仕事をしているのだから、雇用形態に差はあるとしても、バランスのとれた賃金にしてあげましょう」というものです。
一方、均等処遇は、「バランスのとれた賃金では物足りません。正社員と同じ賃金にしなさい」という非常に強力なメッセージを含んだものです。

実際、政府が昨年12月の働き方改革実現会議で示した「同一労働同一賃金ガイドライン」には、「どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにし、我が国から「非正規」という言葉を一掃する」という強い決意が文章化されていました。
ガイドラインは、正規・非正規間で待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理で、いかなる待遇差が不合理なものではないかを示したものです。

現在、この「同一労働同一賃金ガイドライン」をもとに、具体的な法改正作業が進められています。このガイドラインは、インターネットでも閲覧できます。ぜひ目を通していただきたいと思います。

 

同一労働同一賃金政策のインパクト

同一労働同一賃金の考え方はシンプルですが、企業経営へのインパクトは非常に大きいです。とりわけ、これまで人件費を削減するために非正規労働者の雇用割合を増やしてきた企業は、経営戦略を見直さなければならないでしょう。

また年功序列型の賃金体系を取っている会社も見直しが必要です。
多くの企業は完全に年功序列型ではなく、年齢や勤続年数以外にも、経験、能力、役割、業績の蓄積など様々な要素が賃金額の決定に絡んでいると思います。
そこで職務給(職務の難易度によって賃金額が決定される給与制度)や役割給(役割の大きさによって賃金額が決定される給与制度)といった仕事と賃金が直結している賃金制度を導入し、正社員も非正規社員も同じ基準(評価軸)で賃金額を決定・支給する制度とすることが求められます。

現在の賃金制度が職能給(職務遂行能力の高さによって賃金額が決定される給与制度)である場合も、正社員・非正規社員とも同じ基準で能力を評価すれば問題はないと思います。
しかし職能給であっても、純粋に能力だけで評価しているのではなく、これまでの経験の蓄積も加味されているのであれば少し手直しが必要でしょう。

たとえば現在担当している仕事が、これまでの経験と関連性が低い場合(経理を担当していた人が営業に回った場合など)は、仕事と賃金が直接結びつかず、賃金額の違いを合理的に説明することができません。
経験(熟練度)を評価して賃金額を決定すること自体は問題ありませんが、社内異動が難しくなり人材配置の柔軟性が確保できなくなる可能性が考えられます。

「同一労働同一賃金」制度の導入までに各企業では、さまざまな角度から人事制度の見直しが必要であると思われます。

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