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裁量労働制の残業とその計算方法を分かりやすく解説します

裁量労働制の残業とその計算方法を分かりやすく解説します

専門的な知識や技術を活かしたり、創造的な業務を行ったりする場合には、使用者が業務遂行の手段や時間配分等を細かく指示するよりも、むしろ労働者の裁量にゆだねた方が適している場合があります。
こうした状況に対応した働き方として、裁量労働制があります。裁量労働制には、専門業務型裁量労働制(労働基準法第38条の3)と企画業務型裁量労働制(労働基準法第38条の4)があります。

ただし、運用を間違うとサービス残業の合法化になりかねない側面を持っているのも事実ですので、制度の趣旨を理解し、正しい知識のもと制度の導入を行うことが必要です。

 

専門業務型裁量労働制とは?

[対象業務]
専門業務型裁量労働制の対象となる業務については、法令で以下の19業種に限られています。

  1. 新商品・新技術の研究開発、又は人文科学・自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システムの分析又は設計の業務
  3. 新聞・出版の事業における記事や放送番組の制作のための取材・編集の業務
  4. 衣料、室内装飾、工芸製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  5. 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
  6. コピーライターの業務
  7. システムコンサルタントの業務
  8. インテリアコーディネーターの業務
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. 証券アナリストの業務
  11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 大学における教授研究の業務
  13. 公認会計士の業務
  14. 弁護士の業務
  15. 建築士(一級建築士、二級建築士、木造建築士)の業務
  16. 不動産鑑定士の業務
  17. 弁理士の業務
  18. 税理士の業務
  19. 中小企業診断士の業務

例えば4.の考案されたデザインに基づき、単に図面の作成、製品の制作等の業務を行う者や、15.の建築士の業務を補助として製図等の業務を行う者などは、上記には該当せず、この場合の労働時間は、実際に算定される時間に基づき、労働基準法が適用されることになりますので、要注意です。

[導入要件]
専門業務型裁量労働制を導入する場合には、対象業務を遂行する手段及び時間配分の決定等に関し対象業務に従事する労働者に具体的な指示をしないこと、みなし労働時間、対象労働者の健康管理や苦情に対する措置などを労使協定に定め、事業場の過半数労働組合または過半数代表者と締結し、管轄の労働基準監督署に届出をしなければなりません。

 

企画業務型裁量労働制とは?

[対象業務]
企画業務型裁量労働制の対象となり得るのは、対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼすような中枢的役割を果たす業務であり、経営企画や人事・財務などの管理部門、営業企画など、企画、立案、調査、分析という相互に関連しあう作業の遂行方法や時間配分の裁量権が大幅に労働者にゆだねられている必要があります。
そのため、たとえ優秀な者であっても職務経験が浅い場合には、企画業務型裁量労働制の対象とはなり得ず、少なくとも3~5年の職務経験を経ていて、かつ対象業務を適切に遂行するための知識と経験を有していなければなりません。

[導入要件]
対象となる事業場において労使委員会を設置し、委員会にて対象労働者の範囲、みなし労働時間、対象労働者の健康管理や苦情に対する措置などについて審議し、委員の5分の4以上の多数決にて決議し、その結果を管轄の労働基準監督署に届出しなければなりません。
また、決議が行われた日から起算して6ヶ月以内毎に1回、労働基準監督署に定期報告を行う必要があります。

 

みなし労働時間とみなしに含まれない労働時間

裁量労働制では、対象業務を遂行するのに必要とされる1日あたりの労働時間を定めなければなりません。
定めた時間が法定労働時間(8時間)を超えるのであれば、時間外労働になりますので、36協定を締結し、届け出たうえで、2割5分増以上の割増賃金を支払うことになります。
また、みなし労働時間制は休日、深夜、休憩に関しては対象外となりますので、法定の休日や深夜に労働させた場合には、割増賃金の支払い義務が生じます。

 

裁量労働制における時間外、法定休日、深夜労働の割増賃金の計算方法

※所定労働時間が8時間の事業場、1時間あたり給与が3,000円の労働者の場合の計算方法です。

時間外労働みなし労働時間を10時間と定めた時の1日あたりの時間外労働の賃金額3,000円×1.25×(10時間-8時間)=7,500円 ※1.25は割増賃金率
法定休日労働法定休日に9時~18時(休憩時間は1時間)の労働をした時の賃金額3,000円×1.35×8時間=32,400円 ※1.35は割増賃金率
深夜労働22時~4時(休憩時間なし)の労働をした時の割増賃金額3,000円×0.25×6時間=4,500円 ※0.25は深夜労働の割増賃金率

注)上記深夜の時間帯に労働した場合は、割増賃金額4,500円のほかに6時間分の労働に対する賃金が必要です。
この場合、6時間分の労働が1日の労働を通して法定労働時間内であれば割増賃金率は1、法定労働時間を超えていれば割増賃金率は1.25なります。

 

裁量労働制を行う際に気をつけたいこと

専門性や創造性が高い業務、企業の中枢を担う業務が対象となる裁量労働制は、労働者の裁量度が高いという利点もありますが、ともすれば長時間労働になりがちな側面も持ち合わせています。
通常の勤怠管理にそぐわない働き方ではあっても、労働者の健康管理のために、事業主としては、出退勤時刻のチェック等によって、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間在社していたのかの状況を把握することは免れ得ないということにご留意ください。