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知らないとまずい?!退職手続きの流れと必要な対応

知らないとまずい?!退職手続きの流れと必要な対応

退職手続きは企業経営において採用手続きと同様に、必ず発生する業務です。
ですが、退職手続きについて、きちんと誰かに教えられ、法律も踏まえ体系的に理解されている方は少ないのではないでしょうか。

一般的に退職にはネガティブな側面が少なからずあるため、会社側が退職手続きをしっかりポイントを押さえた上で適切に対応しなければ、社員との無用な退職トラブルが発生することにもなりかねません。

退職手続きは、会社側で対応しなければならない手続きが多数あります。
退職が決まったら、どの手続きをいつまでに行う必要があるのか、退職前に抜け漏れなく確認し、スムーズに対応するといった、退職の流れについて解説します。

退職の意思表示の確認

口頭でも退職の意思表示は有効ですが、まずは従業員の退職の意思表示を確実に書面で確認することが必要です。
確認書類として、退職願と退職届があり、役割が大きく異なります。

退職願とは、会社もしくは経営者に対して退職意思を表明する書類です。
退職願を出した時点ではお願いをしているにすぎず、労働契約がすぐに解約されることはないため、会社の承諾があって初めて有効になります。
一方、退職届は、退職願よりも厳格な書類で、会社の可否を問わず、受理された時点で退職が決まります。

従業員は一方的な意思表示によって労働契約を解約でき、原則撤回できません。
多くの会社では就業規則に「退職の1ヶ月以上前に申し出る必要がある」と定められていますが、民法の方が優先され、従業員からの2週間前の意思表示で退職できますので、知っておくと良いでしょう。
退職意思の確認ができて初めて、退職手続きを開始できます。

 

退職時に回収するものと会社から渡すもの

退職するときは入社するときと同様、どの書類も延滞や誤りがないように心がけることが必要です。
特に退職手続きには、退職理由や退職後にどうするのか(すぐに新しい職場で働く、転職活動するなど)によって手続きが異なるケースがあるので、慎重に取り扱わなければなりません。

手続き漏れや記載の誤りによって、退職後の失業保険手続きや新たな雇用保険手続きができないなどのトラブルが発生する可能性もありますので、そのような事態が起こらないようにしっかり確認していきましょう。

■退職時に会社が回収するもの

  • 健康保険被保険者証

扶養家族がいる場合は扶養家族分も同時に回収します。
有休消化で退職日に出勤せず直接回収できない場合は、郵送で返却してもらう旨を伝えます。

  • 名刺

 従業員本人の名刺はもちろん、仕事で得た名刺も会社の営業情報ですので、原則回収します。

  • 鍵、社員証、セキュリティカード

 情報セキュリティ管理のため、忘れずに回収します。

  • 制服、書類、備品など

 会社の所有物ですので回収します。

 

■退職時や退職後に会社から渡すもの

  • 雇用保険被保険者証(会社に預けていた場合)

 雇用保険の失業手当を受給するために必要な書類です。

  • 年金手帳(会社に預けていた場合)

 退職者が国民年金に加入する場合に必要な書類です。

  • 源泉徴収票

 転職先での年末調整や、本人が確定申告する際に必要な書類です。
退職後1ヶ月以内に交付することが、所得税法で決まっています。

  • 離職票

 退職者が失業手当を受給するために必要な書類です。
 転職先が決まっている場合は不要ですので、本人に離職票が必要かどうかを確認します。

ただし、退職者が59歳以上の場合は、本人の希望の有無にかかわらず離職票を交付しなければなりません。

退職理由の確認も忘れずに行いましょう。

  • 健康保険被保険者資格喪失証明書

 退職後、国民健康保険に加入する場合に必要です。

  • 退職証明書

 退職後に家族の扶養となる場合に必要です。

 

社会保険・労働保険の退職手続き

退職が決まったら、社会保険や労働保険の資格喪失の手続きをする必要があります。

■社会保険の資格喪失手続き

健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届

提出期限:退職日から5日以内
提出先:管轄の年金事務所または日本年金機構
添付書類:健康保険被保険者証(本人及び扶養家族分)

※届出用紙の「資格喪失年月日」には退職日の翌日の日付を、喪失原因の「退職等」は退職日を記入します。
例えば、令和2年1月31日退職であれば、「資格喪失年月日」は令和2年2月1日、「退職等」には令和2年1月31日と記入します。

※健康保険被保険者証を紛失等により回収できない場合は「健康保険被保険者証回収不能届」を添付する必要があります。
なお、提出後に健康保険被保険者証が見つかったときは速やかに返却をしてもらいましょう。

 

■健康保険任意継続制度の案内

任意継続保険は退職日以降も社会保険を継続して利用できる制度です。
退職する社員が2ヶ月以上勤務している実績があり、任意継続保険を希望している場合は退職日前までに案内をしましょう。
会社が行う手続きではありませんが、退職者自身で手続きできるよう案内することは必須です。

健康保険任意継続被保険者資格取得届

提出期限:退職日の翌日から20日以内
提出先:管轄の健康保険組合または年金事務所
添付書類:住民票

※届出用紙に退職する前の健康保険被保険者証の「記号・番号」を記載する欄がありますので、返却する前に忘れずに記入してもらいます。
※扶養家族がいる場合は被保険者との生計維持などの証明書類が必要です。

 

■雇用保険の資格喪失手続き

雇用保険被保険者資格喪失届

提出期限:退職日の翌日から10日以内
提出先:管轄のハローワーク
添付書類:雇用保険被保険者離職証明書(離職票の発行がある場合)

離職票は3枚1組の複写式用紙のためダウンロードできません。
ハローワークに取りにいきましょう。

以下の添付書類が必要です。

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 出勤簿、タイムカードなどの出退勤が確認できるもの
  • 退職届、辞令など退職理由が確認できるもの

※退職する社員が記名・押印または自筆による署名をする箇所があるので、退職前に作成しましょう。
既に退職している場合は、本人の承諾のもと、会社が代行することも可能です。

 

■労働保険の手続き

労働保険年度更新申告書

提出期間:毎年6月1日〜7月10日

退職後すぐに行うものではありませんが、正しく年度更新を行わないと在籍していない従業員の分まで誤って労働保険料を納めてしまい、会社として損害が出ることもありますので気をつけたい手続きです。

年度更新は以下の2つの手続きを同時に行います。

  • 前年度に支払った保険料の精算をするための「確定保険料」の申告、納付
  • 当年度の「概算保険料」を納付するための申告

>>日本年金機構 従業員が退職・死亡したときの手続き
>>厚生労働省 事業主の行う雇用保険の手続き

 

住民税の退職手続き

給与支払報告に係る給与所得異動届

提出期限:退職日を含む月の翌月10日
提出先:退職する社員が住んでいる市区町村または再就職先

退職する日によって手続きや実務が異なるので注意しましょう。

  • 1月1日〜4月30日に退職した場合

 最終支払給与か退職金から前年分の住民税の残税額を一括徴収します。

  • 5月1日〜5月31日に退職した場合

 5月に支払う給与で5月分の住民税を徴収するので、通常通り徴収します。
 (住民税の徴収は6月〜翌年5月までです。)

  • 6月1日〜12月31日に退職した場合

 普通徴収にするか特別徴収にするか退職者に選んでもらいます。
 住民税の残税額を一括徴収してほしいと希望があった場合は、一括徴収した月の翌月10日に市区町村に納付します。
 再就職先で特別徴収を継続したい場合は「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を退職する社員が再就職先に提出します。

 

まとめ

退職手続きのポイントをみてきましたが、いかがでしたでしょうか。

退職手続きは退職理由や従業員のその後の進路によっても異なるので注意が必要です。
退職後は退職者と連絡が取りにくくなりますので、手続きや書類の渡し漏れなどがあると会社も退職者も困ったことになり、会社への最後の印象が悪くなる可能性もあります。

ぜひ会社内で退職に必要な手続きの流れや手順を確認し、漏れなくスムーズに対応できるようにしましょう。

 

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