上司からだけではない!職場のパワーハラスメントの具体例と対策
上司から部下へのいじめ・嫌がらせを指して言われることが多い「パワーハラスメント」ですが、先輩・後輩間や同僚間、社員・パートタイマー間、さらには部下から上司に対してなど、職務上の地位だけではなく、人間関係や専門知識、経験などの職場内における様々な優位性による行為もパワーハラスメントにあたります。
そこで、「職場内の優位性」に焦点を当て、どうような行為がパワーハラスメントにあたるのか、具体例と予防、問題解決に向けた取り組みについて解説します。
職場のパワーハラスメントの定義
職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えまたは職場環境を悪化させる行為をいいます。
業務の適正な範囲
受け取る側によっては、業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じたりすることもあるでしょう。
この場合でも、その指導や注意が業務上の適正な範囲であれば、パワーハラスメントとはなりません。
例えば、単身赴任の上司のクリーニングを部下に出しに行かせたり、家族への送金のために部下を振込に行かせたりなど、業務と関係のない命令は、上司から部下に対するパワーハラスメントにあたります。
職場内での優位性
職場内での優位性には、上司から部下へのいじめ・嫌がらせ以外にも、さまざまなパターンがあります。
例えば、専門的な知識を有している部下から上司、勤務歴の長いパートから勤務歴の短い社員、後輩から先輩など、職務上の地位では優位ではない者が、人間関係や専門知識で優越性があり、それを背景に嫌がらせをするケースを、逆パワーハラスメント(以下、「逆パワハラ」という)といいます。
以下、逆パワハラの例です。
- 上司が注意・指導するたびに、部下が「それ、パワハラです」「訴えますよ」と答え、指示を無視する
- 残業が発生した、飲み会に誘った、休日に急ぎの用件を連絡したなど、「パワハラ」という言葉を盾に脅してくる
- 部下から無視される
- 部署内での集まりに呼んでもらえない
- 指示した仕事をしない
- 自分あての連絡を取り次いでもらえない
- 能力や身体的特徴を馬鹿にする
- SNSに悪口を載せて嫌がらせをする
- 殴る蹴るなどの暴力を受けた
精神障害などの労災補償も増加
職場のパワーハラスメントが与える影響は想像以上に深刻です。
嫌がらせ、いじめ、暴行や職場内のトラブルにより、人格を傷つけられたり、仕事への意欲や自信を喪失したり、さらには心の健康の悪化につながり、うつ病などの精神障害を発病し、労災補償を受けるケースも増えています。
パワーハラスメントを受けたら
我慢していても問題は解決しません。
時間が経過すると、さらにエスカレートする可能性もあります。
重要なのは決して一人で悩まず、信頼できる同僚や上司にまずは相談しましょう。
同僚や上司に相談しても改善されない場合や、相談できる人が身近にいない場合は、人事部や社内相談窓口に相談しましょう。
企業は、相談対応の際、プライバシーに配慮することや、相談者等が不利益な扱いを受けないようにすることが求められています。
再発防止のための取り組み
職場のパワーハラスメントは、貴重な人材の損失、業績悪化や企業のイメージダウンにつながる恐れがあり、一部の労働者だけではなく、どの企業、どの労働者にも関係する問題と言えるでしょう。
企業の規模を問わず、パワーハラスメントの予防と問題解決に向けた取り組みが重要です。
行為者に対する再発防止研修の実施
再発を防ぐために研修を実施します。
対象者を集めての社内研修は、お互い顔を合わせることになるので、本人の立場も配慮し、できるだけ避けた方がよいでしょう。
社外セミナーなどへの参加とレポート提出をさせるのも一つの方法です。
事例発生時のメッセージ発信
社内事例ごとに新たな防止策を検討し、毎年のトップメッセージや会社ルール、研修などの見直し・改善に役立てることが望まれます。
またプライバシーに配慮しつつ、同様の問題が発生しないように、社内の主要な会議で情報共有することも重要です。
管理職登用の条件
管理職登用にあたり、部下とのコミュニケーションの取り方や部下への適正な指導や育成にあたれる人材かどうかを昇格の条件とすることも考えられます。
職場環境の改善のための取り組み
職場内のコミュニケーションや人間関係の希薄化、長時間労働の恒久化は、パワーハラスメントに起因すると考えられ、職場環境を改善することが予防にもつながります。