CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

フレックスタイム制は、一定のルールの元、従業員が自由な時間に出社や退社ができるもので、労働基準法の改正によりさらなる活用が期待される変形労働時間制の1つです。
しかしながら、このフレックスタイム制を企業の実態に合わないまま導入すると、業務効率の低下や大きな混乱を招きかねません。
フレックスタイム制は、会社によって向き・不向きがありますので、慎重に考えた上で導入が必要です。
フレックスタイム制を導入する際にはどのようなデメリットがあるのか、管理者と従業員がどのようなポイントを理解した上で運用すべきなのかを解説します。

 

フレックスタイム制のおさらい

フレックスタイム制とは、 1日の労働時間を固定せず、1ヶ月以内あるいは3ヶ月以内の一定期間(精算期間)の総労働時間の範囲で、労働者が各労働日の労働時間を自由に決定できる制度です。
労働者の仕事と生活の両立、いわゆる「ワーク・ライフ・バランス」を図るものであり、業務効率や生産性の向上を目指すものでもあります。

一般的なフレックスタイム制では、1ヶ月などの一定期間の中で1日の労働できる時間帯を定め、その時間帯であればいつでも出社、退社しても良い「フレキシブルタイム」と、必ず労働しなくてはいけない「コアタイム」を定めて運用します。
このフレックスタイム制は、働き方を従業員個々の自主性にゆだねる部分が大きく、働き方に自由度が高いため、優秀な人材の採用や定着の向上につながるメリットはありますが管理が難しい、運用が面倒など、デメリットを理解した上で導入が必要です。

※コアタイムの設定は必須ではありません。すべての時間をフレキシブルタイムにすることも可能です。

【フレックスタイム制の基本モデル】

※東京労働局【フレックスタイム制の適正な導入のために】より引用

 

>>フレックスタイム制の適正な導入のために の適正な導入のために

 

会社にとってのデメリット

フレックスタイム制の会社のデメリットについては、以下の点が挙げられます。

1.従業員同士のコミュニケーション不足に陥る可能性がある
働き方を従業員個々の自主性にゆだねるため、出社・退社時間がバラバラになり業務に関する情報共有や人間関係を構築しづらくなる可能性があります。
2.担当者不在により取引先対応がおろそかになり、場合によっては信用を失うことがある
取引先と出社・退社時間にズレがある場合、担当者不在によりスムーズな対応ができないなど、顧客満足度低下につながるかもしれません。
3.清算期間における実労働時間の確認や残業代の計算など、勤務時間管理が複雑になる
個人個人バラバラの出社・退社時間で精算期間トータルの労働時間を計算して残業代を考えることになるため、集計に関して手作業を行うのはかなり大変になります。
4.全員にフレックスタイム制を導入することは難しい
従業員全員に一斉にフレックスタイム制を導入すると混乱を招きかねないため、一部の従業員に対してフレックスタイム制を導入した方が安心です。

 

しかし、一部の従業員にフレックスタイム制を導入すると「あの部署(人)だけ、ずるい!」など他の従業員から不満が出てきます。

多くの会社では裁量性のあるクリエイティブな部門のみにフレックスタイム制を導入されると思いますが、特別扱いをしていると受け取られがちです。

これは、会社としては避けたい事態です。

 

従業員にとってのデメリット

フレックスタイム制の従業員のデメリットについては、以下の点が挙げられます。

1.コアタイムに打ち合わせなどが集中し、自身の担当業務に集中できない
重なる仕事時間が限られてくるため、打ち合わせに時間を取られ逆に仕事の能率が下がる可能性があります。
2.取引先対応などのため、結果的に通常の労働時間制と始業時刻・終業時刻が変わらない場合がある
特に営業などの職種だと取引先に自身の労働時間を合わせる傾向があります。

せっかくフレックスタイム制を導入しても制度が形骸化する可能性があります。

3.同じ部署の従業員が出社していないと、その業務を代わりに行わなければならない 場合がある
急ぎの仕事を要請された場合、臨機応変に他の担当者が代わりに対応することが考えられます。

代わりに対応することが増えれば、代わりに対応した担当者自身の仕事をなかなか進めることができず、不満を感じてしまいます。

4.自己管理ができない従業員は 労働意欲が低下する可能性がある
特にコアタイムが無い場合、自身で管理する必要があります。

時間の縛りがあった方が働きやすいと感じる従業員もいると思いますので、個別にヒアリングが必要です。

 

まとめ

他社で導入しているからといって、安易にフレックスタイム制を導入してもうまくいかず元に戻す会社が多いのも事実です。
フレックスタイム制を導入する前に、まず目的があるはずです。
その目的が達成できるのであればフレックスタイム制でなくても良いのではないでしょうか。

フレックスタイム制を採用しなくても他の制度で会社の目的は達成できることは多いです。
フレックスタイム制導入ありきの発想ではなく、「自社の働き方に最も合った制度は何か?」という思考がとても大切です。
そのため、フレックスタイム制を導入する際には、以下のポイントを押さえ、管理者と従業員が正しく制度を理解・運用することが必要です。

フレックスタイム制導入のポイント
  • 自社にとって最も合った働き方とは何か、制度導入の目的を明確にする
  • 制度を導入する場合、制度を適用する職種、従業員の範囲を明確にする
  • 必要に応じてコアタイムや、フレキシブルタイムなど一定の制限を設けて業務に支障がないようにする
  • 労働時間に対する意識低下、取引先へのサービス低下などマイナスの影響が出ないよう、情報共有方法の明確化、業務の棚卸し、業務フローを整理し、管理者のマネジメント力向上を図る

制度には必ずメリットとデメリットの両面があります。
他社が導入しているからといって、自社に合うかどうかは分かりません。
常に「何のため?」の制度導入なのか、会社内で何度も話し合ってみる必要があります。

本当に必要な成果や働き方がフレックスタイム制で実現できるのであれば、積極的にフレックスタイム制を導入・活用してみましょう。

【原稿執筆者】
社会保険労務士法人ユニヴィス 社会保険労務士
池田

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