年金を福利厚生として活用する方法とは?知ると得する確定拠出年金
老後安定した生活を送るためには2,000万円の資金が必要という金融庁のレポートは多くの現役世代に衝撃を与えたのではないでしょうか。
正社員として会社に勤務しているほとんどの人が厚生年金に加入しており、毎月の給料から結構な額の年金保険料が引かれています。
将来は年金で暮らせると思えばこそ、現役での年金保険料の徴収も仕方ないと思えるものですが、実はそれだけでは足りない可能性があるとなれば、いまからしっかりと資産形成を考えておく必要があります。
老後の備えについての不安を解消したい社員のニーズに応えつつ、福利厚生として機能させることができる企業型確定拠出年金について解説します。
確定拠出年金とは?
確定拠出年金とは、あらかじめ定めた掛金をもとに、自身が選択した金融商品を個人で運用し積み立てるものです。
原則60歳以降に受け取りが始まります。
掛金の額を決めてから運用するため「確定拠出」と呼ばれます。
将来いくら受け取ることができるかは、運用結果次第です。
金額やどんな商品に投資するか、年金として受け取るか、一括で受け取るかなどを自分で決めることができる、自由度の高い積立式年金だといえます。
確定拠出年金は、掛金の全額または一部を企業が負担します。
かつては福利厚生として厚生年金基金を利用する企業が多くありました。
しかし厚生年金基金は財政難から解散や破綻するところが続出したため、近年は確定拠出年金を採用する企業が増えてきました。
また、確定拠出年金の掛金は所得控除の対象です。
会社にとっても掛金は全額経費として計上することができるため、会社と社員の双方にとって節税効果があります。
iDeCoプラスを使って賢く節税
確定拠出年金の一つにiDeCoがあります。
個人で加入し、運用も個人で行うものです。
平成30年5月からは企業型確定拠出年金の一つとしてiDeCoプラスが新たに設けられました。
自社の社員がiDeCoに加入した場合、社員個人の掛金に企業分を上乗せして拠出することができるもので、福利厚生としても注目されています。
iDeCoプラスを導入するための要件は以下のとおりです。
- 他の企業年金制度を実施していない社員100人以下の中小企業
- 企業が掛金を拠出することに対して社員が同意していること
- 労働組合または過半数を代表する労働者の同意を得ること
- 社員と企業の掛金の合計は5,000円以上23,000円以下
社員の掛金を0円にすることはできないが、企業が社員よりも多く掛金負担することは可能
- 掛金は給料から天引きし、企業がまとめて納付する
給与から天引きする場合でも、確定拠出年金法に賃金控除の定めがありますので「賃金控除に関する協定書」の締結がなくても、労基法違反にはなりません。
確定拠出年金と確定給付年金の違いとは
確定拠出年金の他に、確定給付年金というものもあります。
前者は自分で運用し、将来の給付額は運用結果によって変わるのに対し、後者は給付額があらかじめ決まっています。
確定給付年金は受給要件や給付額は企業が定める規約によります。
運用も企業が行いますが、仮に運用がうまくいかなかった場合は企業が損失分を補填し確定している給付額を社員に保証します。
確定拠出年金は個人で運用するので、自由度は高いですが運用リスクは個人で負うため投資に対する知識や情報を持つことが必要です。
どちらの方が良いかは、それぞれメリット・デメリットがあるため一概には言えません。
もし企業でこれらの制度を導入するのであれば、社員向けに説明会や投資に関する研修等を行うべきでしょう。
確定拠出年金の運用方法
確定拠出年金は、個人で運用リスクを負いますので、運用次第で給付額が大幅に減ってしまうこともあります。
そのため制度を導入する企業は金融商品の中に少なくとも一つは元本保証型のものを含めて社員に提示しなければなりません。
元本保証型の代表は定期預金です。
運用リスクはほとんどありませんが、大きな利益が出ることもありません。
これに対し、元本変動型が投資信託です。
運用の専門家に資金を預け国内外の株式や債券などに投資して、運用成果に基づき利益が分配されます。
運用によって資産が大きく増えることもありますが、逆に元本割れのリスクもあります。
確定拠出年金は元本保証型と元本変動型を複数組み合わせた形で運用方法を構成することもできます。
元本変動型にも、リスクを抑えた運用方法がありますのでよく吟味して選ぶと良いでしょう。
福利厚生の充実が注目される理由
企業にとって人材の確保は重要な課題です。
単純な昇給や昇進制度だけでは社員の満足度を上げることが難しくなってきています。
福利厚生としての確定拠出年金のメリットは、社員のキャリアプランとライフプランをリンクさせることができる点です。
社内等級や社内資格と掛金拠出額を連動させ、会社でどういうキャリアを過ごすか考えてもらうきっかけになります。
転職するよりも、会社に残ってキャリアを築いたほうが良いと思えれば社員の定着率も高まり、社員の仕事の熟練度も上がります。
まとめ
老後の安定した生活に対する関心は若手社員の間でも高まっています。
確定拠出年金は、企業としては節税をしつつ社員のエンゲージメントを高めることができるのが最大の利点です。
年金給付への不安や関心が高まっているいまだからこそ検討してみてはいかがでしょうか。