労働時間は何時間まで?1日11時間労働はブラック企業?!
最近では長時間労働に対して、どんどんと厳しい目が向けられるようになってきています。
企業は長時間労働による被害から従業員の心身を守らなければなりません。
そこで今回は、労働基準法上の法定労働時間、36協定によって可能となる残業時間数、従業員の心身に悪影響を与えない労働時間数、最新の長時間労働規制、望ましい休憩時間、勤務間インターバルといった内容についてお伝えしたいと思います。
労働基準法上の法定労働時間
労働時間は原則として、1日8時間以内、1週間に40時間以内でなければなりません。
これは労働基準法によって規定されています。
また休憩時間にも決まりがあり、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
休憩時間の決まりは必ず守らなければいけませんが、労働時間については、時間外労働協定(36協定)を定めて、行政官庁に届け出ることで、上記上限を超えて労働をさせることができます。
このあたりの法律に関して詳しく相談されたい場合は、弁護士に回答を求めるのもよいかもしれません。
従業員の心身に悪影響を与えない労働時間数
36協定を使えば、2018年11月現在の法律では、事実上際限なく労働をさせることができます。
しかし過度な時間外労働や休日労働が従業員の健康に悪影響を与えるのは間違いありません。
36協定を使う場合であっても、適切な労働時間の設定が求められます。
ここで意識すべきなのが過労死ラインです。
過労死ラインとは一般に、時間外(残業)・休日労働が単月で100時間を超え、または2ヶ月から6ヶ月の平均で月80時間を超えることを指します。
このラインを超えると非常に高い健康リスクがあると考えられていますので、少なくともこれを超える労働は避けなければいけません。
また厚生労働省によれば、時間外・休日労働が、月に45時間を超えて長くなればなるほど、健康被害のリスクが徐々に高まるとされています。
一般的には、時間外・休日労働は、多くとも月に60時間未満に抑えるのが望ましいと言えるでしょう。
例えば、週休2日で1日11時間労働をしている場合、時間外労働は、月に60時間を超える計算になります。
従って1日11時間労働が常態化している会社は、ブラック企業などと呼ばれる危険性があります。
近年では給与など金銭面の待遇よりも、労働時間や休日数といったことに着目する従業員が増えてきたと言われています。
特に若い従業員は仕事よりもプライベートを優先したいと考える人が多くなっています。
従って時間外労働や休日労働が多すぎると、人材確保の点でかなり不利になってしまう危険性があるため、注意が必要です。
最新の長時間労働規制
平成31年4月1日より、時間外(残業)・休日労働の上限規制を定める法律が施行される予定です。
この法改正により、時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
- 年720時間以内
- 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
- 月100時間未満(休日労働を含む)
を超えることはできません。
なお中小企業への適用は、1年遅れの平成32年4月1日からとなっています。
ただし上限規制には、建設事業や医師など適用を猶予・除外する事業・業務があります。
勤務間インターバル
「勤務間インターバル」は、勤務終了後、次の日の出勤までに、一定時間以上の「休息時間」を設ける制度のことです。
例えば朝8時に出勤する企業が、11時間の勤務間インターバル制度を設けた場合、従業員は遅くとも21時までには退社しなければならないことになります。
これにより、従業員は生活時間や睡眠時間を確保し、ライフワークバランスを図ることができるようになると期待されています。
前述の法改正では、勤務間インターバルについて、努力義務(行うことが望ましい)であるとされています。
法律上の義務とは異なり、企業に強制されるものではありませんが、努力義務が後に法律上の義務に変わる可能性もあります。 また勤務間インターバルを設けることで、従業員のライフワークバランスに気を配っていると企業であるいうアピールになり、人材確保の点で有利になることもあり得ます。
以上のような理由から、勤務間インターバルを設けることができそうな状況であれば、一考の価値はありそうです。
労働時間に対する上限規制は、労働基準法制定以来の大改革などと言われることもあります。
しかしまだまだ踏み込み不足であるという声もあり、また長時間労働に対する社会的な反感が強いことから、今後も長時間労働抑止を求められることがあるかもしれません。
人手不足でなかなか労働時間を減らせないなど、難しい部分もあるかと存じますが、残業や休日労働をなんとか少なくしていく策が求められていきそうです。