就業規則の変更方法と注意すべき点
常時10人以上の労働者を使用している事業所において、就業規則の内容を変更する場合は、その都度、労働基準監督署に届け出なければなりません。
また従業員にとって不利益となる就業規則変更は、一定の条件を充足しなければ認められません。
そこで今回は、どんな時に就業規則の変更が必要となるか、就業規則を変更する際の流れ、不利益変更の場合の注意点などについてお伝えします。
就業規則を変更すべき場合
就業規則を変更すべき場合として、以下のようなケースが挙げられます。
1.法改正に対応する場合
法律が改正された場合、その法律よりも従業員にとって不利益な就業規則は無効となります。
最近ですと、育児介護休業が取得しやすくなるなど、育児介護休業関連の法律が頻繁に改正されますが、その場合は就業規則も法律と同等以上の規定にしなければなりません。
2.会社の制度を変更する場合
会社の基本的なルールを変更する場合、就業規則の変更が必要です。
例えばフレックスタイム制度を導入する、定年を延長するといった場合です。
3.就業規則と会社の実態にズレがある場合
就業規則に定めはあるが、実態としては行われていないということは少なくありません。
以前行っていた制度がそのまま規則に残っている、あるいは作成時にテンプレートを使ったため実態と異なる規則が定められているといった場合です。
就業規則は社内でのルールを定めるものですので、実態とルールが異なっているのは問題があります。
場合によってはそれが原因で争いになることも考えられます。
したがって、就業規則にズレがないか定期的にチェックするとよいでしょう。
就業規則を変更する際の流れ
常時10人以上の労働者を使用している事業所における、就業規則変更の流れは以下のとおりです。
1.変更案を作成
法律に抵触しないか、あるいは従業員にとって不利益な変更(不利益変更)にならないかといったことに気を付ける必要があります。
なお不利益変更は不可能ではありませんが、後述のように特別な配慮が必要です。
2.意見書の作成
就業規則変更届を提出する際、従業員の過半数が加入する労働組合もしくは従業員代表から意見を聴取しなければなりません。
それらの意見を記載する書類を一般に意見書と呼びます。
就業規則変更について特に意見がなければ、「特になし」などと記載してもらいます。なお従業員代表を選ぶ場合、会社から一方的に指名することはできず、従業員間の話し合いなど民主的な方法によって選出する必要があります。
また管理監督者に該当する方は、従業員代表にはなれません。
3.就業規則変更届の提出
就業規則変更届を管轄の労働基準監督署に提出します。
変更届と意見書を兼ねて1枚で作成することもできますが、意見書を別に作成した場合は、意見書も同封して提出します。
変更届、意見書ともに任意の書式で構いませんが、厚生労働省のテンプレートを利用することもできます。
4.就業規則の周知
就業規則は、その内容を従業員に周知することが必要です。
周知する方法としては、- 各事業所の見やすい場所に掲示する
- 書面で従業員に交付する
- 電子データなどで保存し、従業員がいつでもパソコンなどから見られるようにする
といった方法があります。
不利益変更を行う際の注意点
就業規則に一度定めると、その定めよりも従業員にとって不利益に変更することは原則として許されません。
不利益変更の例としては、
- 賃金を下げる、手当を廃止する
- 労働時間を伸ばす
- 決まっていた休日をなくす
といったことが挙げられます。
そもそも条件を不利益に変更する場合、本来は各従業員から個別に同意を得なければいけません。
一方で、就業規則変更は従業員代表への意見聴取によって完了しますので、そのような個別同意のない不利益変更は、原則として認められません。
ただし法律では例外的に、「変更の内容が合理的な場合であり、かつ変更後の就業規則を周知させていた場合」に限り就業規則の不利益変更を認めています。
「変更の内容が合理的」か否かは、
- 労働者が受ける不利益の程度
- 労働条件の変更の必要性
- 変更後の就業規則の内容の相当性
- 労働組合などとの交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情
を基準に判断されます。
しかしこれらを加味した結果最終的に合理的と認められるか否かは場合によるところが大きく、「一般的にこういう場合ならば大丈夫」という基準はありません。
したがって基本的には不利益変更を避けたほうが無難ですが、やむを得ない場合は事前に弁護士などに相談されることをおすすめします。
なお法律的に不利益変更が認められるとしても、それによって従業員の士気が下がることはできるだけ避けなければなりません。
したがって従業員に対して、どうしてこのような不利益変更をしなければならないのかといった経緯、今後の方針などしっかりと説明する必要があります。