CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

従業員トラブルで、最近、増加しているのが会社を退職した従業員からの未払い残業請求です。
未払い残業代に関する情報の広まりや、未払い残業代請求に力を入れ始めている弁護士が増えていることも影響していると考えられます。

実際に未払い残業代について裁判所等から会社に支払の決定がくだされると、支払う金額の大きさによっては、会社が経営破綻に追い込まれる可能性もあります。

退職従業員から未払い残業代請求を起された場合、どのような形でおこなわれるのか、また、そのリスクを回避するための会社の対応策について解説します。

 

従業員の未払い残業代が会社に与えるリスクとは?

平成29年8月に公表された「平成28年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果」によると
是正企業数1,349企業のうち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは184企業あり、支払われた割増賃金合計額 127億2,327万円で、労働者数 9万7,978人となり、支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり943万円、労働者1人当たりにするとおよそ13万円となっています。

この賃金不払残業是正の中には、退職者からの未払い残業請求も含まれています。

裁判所は、割増賃金を支払わなかった使用者に対して、未払い残業代のほか、その額と同額までの範囲での「付加金」支払い、さらに、退職した従業員が請求した場合は、未払い残業代の金額の14.6%である「遅延損害金」の支払いを命じることができます。

これ以外にも、未払い残業代請求を知った他の従業員からも連鎖的に同じような未払い残業代の請求を求められるというリスクが発生することが予想されます。

 

退職した従業員からの未払い残業代請求は、どのような形で行われるのか?

退職した従業員が会社に対し、未払い残業代を請求した場合の解決方法について、次の5つのケースが挙げられます。

1.本人や代理人が会社に直接交渉をしてくるケース
裁判外の交渉となるため、特に決まったルールや手順はなく、基本的に会社と労働者もしくは代理人が話し合いによって解決を図ることとなります。
あくまで当事者に話合いの意思がなければ解決は困難ですし、当事者がどこまで譲歩できるかにもよります。また、感情的に対立することもあるという点に注意が必要です。
未払い残業代を請求する場合、退職した従業員または、代理人から、請求書類が送付されてきます。交渉により話がまとまった場合、使用者との間で合意内容を確認する書面(合意書、和解書)を作成します。
2.労働基準監督署へ通報されるケース
退職した従業員等から、未払い賃金問題について労働基準監督署に通報があった場合、通常、労働基準監督署は、会社への臨検(立ち入り検査)を行います。
未払い残業代が発生している場合、「全額払いの原則」に違反している旨の是正勧告が行われ、労働基準監督署は事業主に対して、未払い賃金や未払い残業代を支払うよう促すことになります。
悪質な場合は送検され、さらには30万円以下の罰金(労基法120条)という刑事罰が課されます。
3.紛争調整委員会(都道府県労働局)による「あっせん」のケース
「あっせん」とは、労働問題について争いのある会社と従業員等の間に第三者である紛争調整委員会によって、裁判をしないで紛争当事者間の調整を行い、紛争の円満な解決を図る制度です。
従業員等から都道府県労働局へ「あっせん」の申請が行われ、会社側に決定された「あっせん」の日時の通知が届きます。
会社側とあっせん申請者の両者の合意が成立し、あっせん内容を受諾すると民法上の和解契約の効力が生じます。会社は、「あっせん」に参加しないことができ、その場合は、「あっせん」は打ち切りとなって終了します。
4.裁判所による「労働審判」制度のケース
裁判所が行う「労働審判」とは、裁判官1名と労働問題に関する専門的知識や経験を有する2名の労働審判員で構成される労働審判委員会で話し合いが行われ、その審理の回数は、原則として3回以内なので迅速な解決を図ることができることが特徴となっています。
裁判で主張する形ではなく、話し合いによって妥協点を見出して解決するという方向です。
労働審判での結果は、法的効力もあるので、会社側はその内容に対して従う形となります。
5.労働訴訟の裁判によるケース
退職した従業員が原告として、裁判所に未払い賃金に対する訴えを起こす民事訴訟となります。
請求金額が140万円以下の事案は基本的に簡易裁判所、それより大きな金額となる場合は、地方裁判所で行われます。
口頭弁論期日(法廷を開く日)が決定したら、裁判所から会社に、訴状、呼出状、答弁書催告状、そして訴状と一緒に提出された証拠書類が送付されます。
裁判になると、時間が長くかかる分、弁護士費用も多くかかる傾向にあります。また、労働者保護の観点から、会社にとって厳しい結果がでることが多い傾向にあります。

 

残業代請求が行われた場合、勤務した時間の証拠となるものは?

裁判等で争う場合、基本的に法律違反の事実等を立証する責任を負うのは、訴えた側ですが、労働問題に関する裁判では、事実を立証する証拠である勤怠に関する資料等を保管しているのは、会社側となります。

会社が証拠の提出に応じなかった場合には、「推計によって処理する」とし、おおむね労働者側の主張に従って割増賃金の支払を命じた判例があります。

会社が労働者の労働時間を適切に把握する責務を果たしていない場合、タイムカード等の客観的で明確な記録がなくても、労働者が個人的に記録している手帳のメモなどが証拠として採用されてしまう場合があるのです。

 

退職者の未払い残業代で、モメないための対策は?

従業員から未払い残業代を請求された場合、会社は「従業員が残業をしたとして請求している時間は、実際の労働時間に比べて過大に請求されている」という反論ができる状態にしておく必要があります。

  1. 労働時間を把握し、正しい勤怠管理を行う
  2. 残業許可制と許可のない場合の残業禁止を規定し、従業員に無許可の残業を黙認しないことを徹底する
  3. 定額残業代の支給額が実際の勤怠時間に即して払われている
  4. みなし労働時間制の運用が、実態に沿って正しく行われているか
  5. 管理監督者の地位が名目上だけでなく、実質上該当している
  6. 退職に関する手続きや事実関係、処理の方法、また、特段の債権債務もないことなどについて、双方合意の上、確認できるよう合意文書のような書面として残すような対策を実施しているか

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従業員の勤務時間を把握せず、なんとなく残業代を支払わないままやってきた・・・という会社にとっては、そのような状態が放置できない状況です。
従業員から残業代を請求された段階で初めて対策を考えるといった場合、経営者には極めて厳しい措置が取られることを覚悟しないといけません。

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