CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

過労死は、1980年代後半から社会的に大きく注目され始め「過労死」という言葉は、日本だけでなく、国際的にも「karoshi」として知られるようになりました。

過労死等は、長時間の残業や休みなしの勤務を強いられる等の結果、精神的・肉体的負担で、労働者が脳溢血、心臓麻痺などを発症し命を失ったり、うつ病や燃え尽き症候群等を起こし、その結果、自殺を招くことも含まれます。

近年、劣悪な雇用管理を行う問題について、企業としての対策の必要性が各方面で指摘されています。 国は、平成30年7月24日に「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の見直し案をまとめ、過労死ゼロを目指すための具体的な数値目標を閣議決定しました。

国民が健康にはたらき続けることのできる充実した社会の実現のために、新規目標や追加となった過労死等の具体的数値設定や商慣行・勤務環境等を踏まえた取り組みの推進について解説します。

 

過労死等とは?

過労死等防止対策推進法第2条により、過労死等は以下のように定義されています。

  1. 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
  2. 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  3. 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

厚生労働省は、労働者に発症した脳・心臓疾患を労災として認定する際の基準として、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」を定めています。

仕事が特に過重であったために血管病変等が著しく増悪し、その結果、脳・心臓疾患が発症した場合に、仕事がその発症にあたって、相対的に有力な原因となったものとして、労災補償の対象となるとしています。

脳・心臓疾患の認定基準の概要と、「過労死」がどのように労災認定されるかについて、わかりやすくまとめられたリーフレットが「脳・心臓疾患の労災認定-「過労死」と労災保険-」として公開されています。

 

過労死等防止対策として設定された数値目標とは?

  1. 労働時間について、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下とする(2020年まで)。 なお、特に長時間労働が懸念される週労働時間40時間以上の雇用者の労働時間の実情を踏まえつつ、この目標の達成に向けた取組を推進する。
  2. 勤務間インターバル制度について、労働者数30人以上の企業のうち、
    1. 勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満にする(2020年まで)。
    2. 勤務間インターバル制度(終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間を設けることについて就業規則又は労使協定等で定めているものに限る。)を導入している企業割合を10%以上とする(2020年まで)。
  3. 年次有給休暇取得率を70%以上とする(2020年まで)。特に、年次有給休暇の取得日数が0日の者の解消に向けた取組を推進する。
  4. メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする(2022年まで)
  5. 仕事上の不安、悩みまたはストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合を90%以上とする(2022年まで)。
  6. ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上とする(2022年まで)。

 

労働行政機関による過労死等対策の重点業種・職種での取り組みとは?

過労死等が多く発生しているまたは長時間労働者が多いと指摘されている背景には様々な取引上の制約が存在しているため、業種等各分野の特性に応じた対策が行われるように、国が取り組みを策定しているものがあります。

ア. トラック運送業
長時間労働の是正にはトラック運送事業者側のみの努力での解決が困難な面もあることから、発注者との取引関係の在り方も含めて取引環境の改善や長時間労働の抑制に向けた取組の実施が必要。 2018年5月に策定された「自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画」に基づき2024年4月1日までに長時間労働是正の環境整備等に向けた取組を集中的に進めていく。
イ. 教職員
ICTの活用やタイムカード等による勤務時間の客観的な把握、業務の役割分担や適正化、必要な環境整備等、「学校における働き方改革に関する緊急対策」(2017年12月26日分部科学大臣決定)に基づき、教職員の長時間勤務是正に向けた取組を着実に実施。
ウ. 医療従事者
患者やその家族も含めた国民の理解を得ながら医療提供体制を損なわない改革を進めるため、当面は、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」(2018年2月27日医師の働き方改革に関する検討会取りまとめ)に示された労働時間管理の適正化等とともに労働時間短縮に向けた取組を実施し、夜勤対応を行う医療従事者の負担軽減のため、勤務間インターバルの確保等の配慮が図られるよう検討を進めていく。
エ. 情報通信業
IT業界については「厳しい納期」、「予想外の仕事が突発的に発生する」など各プロジェクトの現場での仕事の進め方や取引の在り方を見直すことに着目し作成した「働き方改革ハンドブック」(2018年3月)の周知徹底や企業向けセミナーの開催等による長時間労働削減対策を促進すると共に、月ごとの残業時間やテレワーカーの比率のフォローアップを行い、長時間労働の削減に向けた取組を促していく。
オ. 建設業
建設業における長時間労働是正のために、適正な後期設定や適切な賃金水準の確保、週休2日の推進などの休日確保等、発注者の理解と協力が不可欠であることから、公共・民間工事を問わず建設工事に携わる全ての関係者が守るべきルールを定めた「建設業における適正な工期設定等のためのガイドライン」(2018年7月改訂)について引き続き周知・徹底に取り組んでいく。

 

過労死等を防止するために事業主が取り組むべきこととは?

労働契約法第5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定されており、労働安全衛生法第3条第1項では、「事業者は、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」と規定されています。

職場における取組としては、労働基準や労働安全衛生に関する法令を、事業主が遵守することが重要であり、今回、国が定めた数値目標に協力するとともに、労働者を雇用する者として責任をもって対策に取り組むよう努めることが求められています。

過労死等の原因のひとつとして挙げられている「長時間労働」については、労働行政機関としても重点的に取り組む対策となっています。

適切な労働時間で働き、きちんと休むことは、労働者の仕事に対するモチベーションを高めることにつながり、業務効率や生産性向上、企業の成長・発展にもつなげられ、また、離職率の低下も期待できます。

労働者を管理すべき立場の事業主は、長時間労働是正のためにも勤怠時間の正確な把握を実施し、ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方を進めていくことが課題とも言えるのではないでしょうか。

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