CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

「週休3日制」は、大手有名企業が先駆けて導入したことで、「週休3日制」に近頃注目が集まっています。
ワークライフバランスの実現や生産性の向上といった効果が期待されており、今後国内企業でスタンダードな働き方として定着するか否か議論されています。

「週休3日制」とは、企業ごとに設計された時間制約型の新たな雇用形態、つまり労働時間に制約を持たせた働き方をする正社員区分を意味しています。

法的な観点からの背景では、人手不足が深刻化する労働市場環境において「より働きやすい職場」であることをアピールして採用を強化したいという理由などもありますが、まずは法制上の背景を解説します。

 

週休3日制が注目される法制上背景

週休3日制が注目される背景には、労働基準法改正により罰則付きの労働時間の上限規制が予定されていることが挙げられます。

【改正労働基準法による時間外労働の上限】

  1. 単月100時間(休日労働を含む)未満
  2. 2ヶ月ないし6ヶ月での平均で80時間(休日労働を含む)以内
  3. 年間720時間以内

従来も36協定による時間外労働には上限が設定されていましたが、これはあくまでも「一つの基準」に過ぎませんでした。

改正により法規則上の規制となり、上限を超える時間外労働をさせた使用者は即法違反を問われることになります。
従来の正社員に長時間の時間外労働を求めることが難しくなる、というよりもできなくなります。
そのため、従来の正社員の働き方を短時間化していくことを避けては通れない課題になっており、その対応策として「週休3日制」が浮上していると考えられます。

 

週休3日制のメリットとデメリット

従来からの正社員は、時間の制約がなく無制限に会社のために働くことができる人たちとした場合、会社としては、「正社員=使いやすい」という大きなメリットがあります。

その観点からすると「週休3日制」により時間に制約がある働き方は、「人を使いづらくなる」デメリットがとして捉えられるかもしれません。

しかし、「人を使いづらくなる」というデメリットを受け入れてもなお「週休3日制」の導入に踏み切る企業が考えるメリットは次のようなものがあります。

【メリット】

  1. 有能な人材の採用・定着に繋がる
  2. 従業員満足度向上に寄与する
  3. 雇用区分が明確になり、待遇さの説明が合理的にできるようになる

【デメリット】

  1. 必要な増員の追加
  2. シフト調整の工数
  3. 残業代減少による給与の目減り

 

導入事例

「週休3日制」の導入した2つの事例を以下の通りご紹介します。

(1)小売業A社の場合 非正規からの登用型
パート社員(主に主婦層)の登用のために短時間正社員制度を導入したというA社がメリットとして挙げるのは「有能人材の定着」です。
小売業を営む同社では、販売の最先端に立つパート社員の販売力により業績が大きく変動するといいます。
ところが、販売力の高いパート社員が家庭の事情により退職を余儀なくされることが少なくありません。
なぜなら、そのパート社員の家族であるパートナーが、家庭環境に変化があったとき、パートなら気軽に退職を促すことが多いという背景があったからです。
そのため、同社は、短時間正社員として、従来からの正社員の所定労働時間の2分の1以上の勤務総枠で勤務できるパートを対象に短時間正社員に登用する仕組みを設けることで有能人材の定着に寄与できました。
(2)某広告代理業の場合 正社員からの転換型
正社員の恒常的な長時間労働に課題を感じていた同社は、新しい働き方として週休3日制を導入。 他社との差別化を図ることにより既存社員のモチベーション向上・新規採用強化を図りたいという思いから制度を導入しましたが、次のようなデメリットに直面しました。

     

  • 裁量労働制で勤務している社員が多く、実労働時間の把握ができていない
  • 基本給のほかに固定残業手当を本給の構成要素としていたため、賃金減額のインパクトが大きくなりすぎることが想定された

 

そこで同社では、次のような取り組みを進めたところ、従来の正社員の労務管理上の課題を明確にすることができ、目的達成に貢献することができました。

 

     

  • 正社員のうち裁量労働制の対象者を再編し、原則、労働時間制により勤務することとする対象者を拡げた
  • 裁量労働制の対象者も実労働時間の把握を行うこととした(勤怠管理の厳格化)
  • 固定残業手当の縮小と、会議時間の短縮など時短の取組みを同時に実施した。

 

「週休3日制」をはじめとする時間制約型正社員の雇用区分の創設は、多くの会社にとってはまだまだ労働時間管理枠の設計や残業代と賃金との兼ね合いなどの課題も多く、導入するにはハードルはあります。
ただ、少子高齢化による人材不足、価値観の多様化などの時代背景からすれば柔軟な働き方を認めることこそが長期的に繁栄することができる会社の必須条件になるのかもしれません。

 

【原稿執筆者】
社会保険労務士法人ユニヴィス 社会保険労務士
池田 久輝