CLOUZA COLUMN

勤怠管理コラム

1986年に男女雇用機会均等法が施行されたことにより、性別による採用、昇進、教育訓練、福利厚生、定年・解雇での差別が撤廃され、その後の改正で採用、昇進、配置転換において合理的な理由のない転勤要件を科すことは禁止されました。

それでもなお、女性は男性に比べて会社内での活躍が遅れているのが現状です。

 

女性が働きやすい会社

2016年に女性活躍推進法が施行され、常時雇用する労働者数が300人以上の会社は、女性活躍のための①現状把握、②課題分析と行動計画の策定、③情報の公表が義務づけられました。

300人未満の会社は現在のところ努力義務となっていますが、一定の要件をもとに、国の認定制度もありますので、女性社員を増やして人員確保したい、女性の視点を取り入れたいと考える会社はぜひ取り組まれることをお勧めします。

この法律では、会社が上記①にある現状把握すべき事項として以下の4項目を挙げています。

  • 採用した労働者に占める女性の割合
  • 男女の平均勤務年数の差異
  • 労働者の各月ごとの平均残業時間
  • 管理職に占める女性の割合

これまで女性が活躍できなかった理由には、性別役割分担意識によって、会社が本気で女性を育成してこなかったことが考えられます。
例えば「これは男性の仕事」、「責任が重い業務だから女性には任せられない」、「女性は結婚や出産で辞めてしまうだろう」といった意識により、女性には活躍する機会が十分に与えられていませんでした。

その結果、日本では管理的立場に就く女性労働者は2014年時点で11.3%であり、国際的にみてもかなり低い状況です。
出典:内閣府男女共同参画局 I-2-11図 就業者及び管理的職業従事者に占める女性割合より

今後、会社に求められているのは、女性の採用数を増やし、これまで慣例的に男性が就いていた業務にも経験させて育成すると同時に、長時間労働の削減や、妊娠や子育てをしていても利用できる制度の整備を行ったうえで、女性が能力を発揮できる職場に変えていくことなのです。

 

妊娠~育児で会社が知っておくべき制度

妊娠から育児(就学前まで)について定めている法律は、労働基準法(産前産後休業など)、男女雇用機会均等法(母性健康管理措置)、育児・介護休業法(育児休業や短時間勤務制度など)があります。

育児・介護休業法はこれまで何度も改正が重ねられていますが、直近では、2017年に、「子の看護休暇」が半日単位でも使えるようになりました。
「子の看護休暇」とは、就学前の子1人につき年5日(2人以上の場合は10日)、子どもの病気・ケガの時や健康診断の時に休むことができる制度です。
これまでの法律では、1日単位での利用単位となっていたのですが、今は半日単位で利用できることになっています。

妊娠中の体を保護するために規定されている母性健康管理措置については、知らない人が多いので、次にご紹介いたします。

[男女雇用機会均等法]

・第12条 健康審査等を受診する時間の確保
妊娠~妊娠23週まで  4週間に1回
妊娠24週~35週まで 2週間に1回
妊娠36週以降    1週間に1回
出産後1年以内    医師等の指示に従って必要な時間
・第13条 医師等の指導事項を守ることができるようにするための措置
妊娠中の通勤緩和(時差出勤、勤務時間の短縮等)
妊娠中の休憩時間(時間の延長、回数の増加等)
妊娠中と出産後の症状等に対応(作業の制限、休業等)

上記に定めているように、妊娠中の社員が検診のために通院することを希望すれば、事業主は認めなければなりません。
また産婦人科の医師等から会社に指導があれば、労働時間を短くしたり、就業中でもゆっくり休ませたり、体に負荷のかかる業務から外したりすることは、法律で定められています。

妊娠していることで業務内容を変更したり、作業能率が下がったり、また子育て中ということで残業ができなかったり、休みがちになることは仕方ないのですが、業務上の負担が職場にかかってしまうことで、しばしば上司や同僚の言動により、働き続けることが困難になってしまう事態が起きています。

そのため2017年の男女雇用機会均等法と育児・介護休業法の改正では、いわゆるマタハラとして次の様な上司や同僚による言動が就業場所で起こらないように事業主が対応を取ることが盛り込まれました。

例)妊娠中の社員や子育て社員に対し
上司が、必要な仕事上の情報を与えなかったり、「辞めた方がいいのでは?」と発言する 同僚が、無視や非協力な態度をとったり、繰返し「みんなが困っている!」と発言する

【関連ページ】

どんな行為がパワハラに当たる?パワーハラスメントを徹底解説します。

 

女性の「継続就労」から「活躍」へ

これまでは、妊娠や子育てをしていても、母性健康管理措置や育児休業等の制度を利用することで、会社を辞めずに働き続けられ環境をつくることに注力してきました。
しかし今後はさらに一歩進んで、活躍する人材に育てていくことに目を向けていく必要があります。

子育てしながら働くことが自然とできる会社で、社員が能力をもっと発揮し、イキイキと輝いてこそ、女性活躍といえるのではないでしょうか。

 

【原稿執筆者】
新田 香織
特定社会保険労務士、キャリア・コンサルティング技能士2級
グラース社労士事務所代表 http://grasse-sr.com
育児や介護等のライフイベントがあっても自然に働ける社会、誰もが能力を発揮できる社会の実現を目指して社会保険労務士の立場から企業コンサル、研修、執 筆活動等を続けている。主な著書に「仕事と介護両立ハンドブック」(生産性情報センター)、「さあ、育休後からはじめよう」((共著)労働調査会)など多数。