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施行直前!確認しておきたい年次有給休暇の時季指定義務のポイント

施行直前!確認しておきたい年次有給休暇の時季指定義務のポイント

平成30年6月に成立した働き方改革法案によって、平成31年4月より年間の年次有給休暇(以下、「年休」という)の消化日数が5日未満の従業員に対し、年休を取得するべき日を指定することが、大企業だけでなく中小企業を含むすべての会社において義務づけられました。
従業員が請求する日を申し出て取得することが原則の年休ですが、職場への配慮や請求することへのためらいなどの理由により、取得率が低迷している現状にあり、年休の取得促進が課題となっています。
そこで国は、「年休取得率70%」を2020年の目標として掲げ、この制度が設けられました。
施行直前のこの時期に、時季指定義務のポイントについて確認しましょう!

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待ったなし!年次有給休暇の時季指定義務のポイントと対策

 

新しい年休制度の主体義務

年休の取得は従業員の権利ですが、新年休制度では、従業員ごとの年5日の年休について、会社の時季指定「権」ではなく時季指定「義務」となり、対象の従業員から時季に関する意見を聴くこと、またそれを尊重して会社が年休を付与する義務を負うことになります。

 

年休の付与や取得に関する基本的なルール

労働基準法において、以下を満たす従業員(管理監督者や有期労働者も含む)に年休が付与されます。
また、パートタイマーなど労働日数が少ない従業員にも所定労働日数に応じて付与されます。

  • 雇入れの日から6か月継続して雇われている
  • 全労働日の8割以上を出勤している

年休は、原則、従業員が請求する時季に与えることとされています。
請求権の時効は2年で、前年度に取得されなかった年休は翌年度に繰り越されます。
>>年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説

 

年5日の年休の確実な取得

1.対象者

法定の年休付与日数が10日以上の従業員(管理監督者や有期労働者も含む

 

2.年5日の時季指定義務

年間で10日以上の年休が付与される労働者ごとに、付与した日(基準日)から1年以内に5日について、時季を指定して年休を取得させなければなりません。
時季指定に当たっては、会社が勝手に時季を指定するのではなく、従業員の意見を聴取し、できる限り従業員が希望する時季に取得するよう努めなければなりません。
既に5日以上の年休を取得している従業員に対して、会社は時季指定義務を負う必要はなく、また、時季指定をすることができなくなります。
既に3日の年休を取得している従業員に対しては、会社は、残り2日の時季指定義務を負うことになります。

3.年休の取り扱い

  • 1労働日の年休取得 → 1労働日の義務が免除
  • 0.5労働日の年休取得 → 0.5労働日の義務が免除
  • 1時間の年休取得 → 義務は免除されない

 

※時間単位の年休は、時季指定義務の対象となっていない点に注意!

4.年休の計画的付与

年休の計画的付与(以下、「計画年休」という)を導入している会社は、導入していない会社よりも年休の取得率が高くなっており、年休の確実な取得方法のひとつとして計画年休があります。

 

  • 一斉付与方式
    会社もしくは事業場全体の休業
  • 交代制付与方式
    班・グループ別の交代制
  • 個人別付与方式
    個別の年休付与計画による

 

計画年休は労働基準法上、労使協定の締結が必須です。
ただし、新年休制度では、個人別付与方式について制度として就業規則に定めれば労使協定の締結は不要となります。(施行通達 平成30.9.7基発0907第1号)

5.年次有給休暇管理簿

会社は、従業員ごとに、時季、日数及び基準日(年休を付与した日)を記載した年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。

6.就業規則への規定

休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)です。
時季指定の対象となる従業員の範囲及び時季指定の方法など、会社による年休の時季指定義務に関する事項は就業規則に定める必要があります。

7.罰則

年5日の時季指定義務及び就業規則への規定に違反した場合は罰則に科されることがあります。

 

  • 年5日の年休を取得させなかった場合(※)
    30万円以下の罰金(労働基準法120条)
  • 時季指定義務に関して就業規則に記載していない場合
    30万円以下の罰金(労働基準法120条)
  • 従業員の請求する時季に所定の年休を与えなかった場合(※)
    6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法119条)

 

(※)の罰則は、対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われます。

>>年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説

 

まとめ

新年休制度は、従業員ごとの年休管理簿(3年の保管義務)が必要となり、違反した際の罰則(労働基準法第120条)も定められ、年休の取得率向上に対して国も本気になっているということでしょう。
新年休制度はすぐ目の前です。
H31年4月までに、就業規則の変更や運用ルールの構築など必要とされる準備が急がれます。
また、新年休制度において、従業員ごとに基準日の違う年休の管理は非常に困難になることが見込まれますので、年次有給休暇管理システムの導入など、早めに対応策を検討されることをおすすめします。
年休の取得は従業員の心身の疲労回復、生産性の向上など、従業員・会社双方にとってメリットがあります。
年5日にとどまることなく、従業員がより多く年休を取得できるよう、会社として職場環境の整備に努めることが重要とされます。

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