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正しく理解していますか?知っておきたい年次有給休暇のポイント

正しく理解していますか?知っておきたい年次有給休暇のポイント

旅行サイトExpediaの2017年の調査結果によれば、年次有給休暇消化率が世界30か国中ワースト1位の日本。
厚生労働省の最近の発表によると、2017年の年次有給休暇の取得率が1.7ポイント増の51.1%で向上してはいますが、まだまだ低いのが現状です。
こうした状況を踏まえ、政府も労働基準法改正の中で有給取得促進に向けた動きを強めています。
ですが、企業や従業員は年次有給休暇について正しく理解していますでしょうか。
正しい認識で管理・運用していかなければ無用な労務トラブルが起こる可能性があります。
今回は、そもそも休日と休暇の違い、基本的な年次有給休暇の付与や発生要件、時効などを整理し、運用上注意すべきポイントを解説します。

>>世界30カ国の有給休暇消化率ランキング、日本はワースト1位、トップは100%消化のフランスなど3か国(トラベルボイス)

 

休日と休暇の違い

そもそも休日と休暇の違いは何でしょうか。
休日とは、就業規則や雇用契約書等により「労働義務がない日」と定められている日です。
それに対して、休暇とは、本来は「労働義務のある日」であり、労働者の申請により「労働義務が免除される日」です。

なお、休暇については、労働基準法や育児・介護休業法などにより、以下の休暇を付与しなければなりません。
なお、法律で有給として義務づけられているのは、年次有給休暇のみです。
その他の休暇については請求があれば付与することが義務づけられていますが、有給・無給については会社の裁量で決めることができます。

  • 年次有給休暇
  • 産前産後休業
  • 生理休暇
  • 育児休業
  • 介護休業
  • 子の看護休暇
  • 介護休暇
  • 裁判員休暇

年次有給休暇とは?

年次有給休暇は、正社員、アルバイト・パートタイマーなどの雇用形態にかかわらず、一定の期間勤続した労働者が心身の疲れを癒し、ゆとりのある生活をするために法令上の要件を満たせば付与される休暇です。
この年次有給休暇を会社から付与されるためには条件が2つあります。

  1. 雇い入れの日から6カ月以上継続勤務していること
  2. その期間の8割以上を出勤していること

こちらの条件を満たすと、年次有給休暇が付与されます。
最初に付与されるのは、雇い入れの日から6カ月が経過した時です。
その後、1年が経過するたびに所定の日数が付与されることになります。
この日数は、一般的な会社では正社員とアルバイト・パートタイマーでは違います。
短時間労働者の場合には、正社員とは違い比例的に付与され、この仕組みを比例付与と言います。

ここでいうアルバイト・パートタイマーとは、週の所定労働時間が30時間未満かつ週の所定労働日数が4日以下もしくは年の所定労働日数が48日から216日までの労働者のことです。
労働者に年次有給休暇を上手に利用させることは、労働者の心身を健全な状態に保ち、ひいては会社としての生産性を上げることや、労働災害の防止にもつながります。
結果として、会社の経営にも良い影響を与えることになります。
>>年次有給休暇|確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト|厚生労働省

 

年次有給休暇を取得する権利と運用上の留意点

労働者には年次有給休暇を自由に取得できる権利があります。
ただし、以下の点について運用する際に留意が必要です。

  1. 年次有給休暇の利用目的によって、その取得を制限することはできません。
  2. 労働者から年次有給休暇の請求があった場合には、原則としてこれを拒めません。
    ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には、これを他の時期に変更することができます。
  3. 年次有給休暇の買い上げの予約をし、これに基づいて休暇の日数を減じたり、請求された日数を与えないことは労働基準法違反となるのでできません。
  4. 使用者は、労働者が年次有給休暇を取得したことによって、労働者に対し賃金の減額その他の不利益な取り扱いをしないようにしなければなりません。(労基法附則136条)

上記2の「事業の正常な運営を妨げる場合」について、繁忙期等、人出が余分に欲しい時期の年次有給休暇取得は、業務の円滑な遂行に支障があり、また他の労働者の負担も増してしまいます。
そのため、こうした場合、会社には時季変更権が認められています。
事業の正常な運営を妨げる諸般の事情(事業の内容や規模、年次有給休暇を請求した労働者の担当する業務、時期の繁閑、予定された休暇日数、他の労働者の休暇との調整等)を検討して、総合的に判断します。
上記3の「年次有給休暇の買取り」について補足ですが、買取りは違法となり許されませんが、以下のような2点の場合、会社が就業規則上に買取りを認める規定がある場合に限り、年次有給休暇を買い取ることができます。

  • 法定日数を超過する分の年次有給休暇
  • 退職などで権利行使ができなくなる年次有給休暇

また、年次有給休暇の請求権の時効は2年間です。
これは、労働基準法第115条の規定により、年次有給休暇の請求権は、基準日に発生します。
基準日は入社日や4月1日など会社によって規定することができます。
その基準日から2年後に時効によって請求権がなくなります。
>>年次有給休暇|確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト|厚生労働省

 

まとめ

年次有給休暇について整理しましたが、いかがでしたでしょうか。
年次有給休暇は、冒頭前述のとおりですが、休日以外にも一定のお休みを与えることで「心身の疲労回復」や「ゆとりある生活の保証」のために法律で規定されたものです。
そのため、会社が付与しなかったり取得を妨害したりすることは違法になります。
とはいえ、現状、有給休暇取得率をアップするのが厳しい会社状況であれば、一度専門家にご相談いただくのもいいかもしれません。
有給休暇の法律が厳しくなる昨今、業務と休暇のバランスを整えて、生産性と業績を向上できるように有給休暇をうまく活用していきたいですね。

【原稿執筆者】
社会保険労務士法人ユニヴィス 社会保険労務士
池田