勤務間インターバル制度を導入するなら押さえておきたい勤怠管理術
「勤務間インターバル制度」という新しい労働時間制度が、世間の注目を集めています。
この制度は、前日勤務と当日勤務との間に一定時間以上の間隔(インターバル)を設けることを義務付けるものであり、すでに運輸業界や大企業などで導入されています。
今後は、日本企業の間に、急速に広まっていくものと考えられます。
今回は制度導入の必要性と助成金制度、注意点などについて、具体的な例を元に解説します。
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勤務間インターバル制度とは?
社員の休息時間を設けて健康保持や過重労働の防止を図る施策
「勤務間インターバル制度」とは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設けることで、社員の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るものです。
EU(欧州連合)では、1993年に11時間の休息時間を設けるインターバル規制が法制化されており、すでに社会に浸透しています。
日本でも、一部の業界で導入が行われています。
日本における勤務間インターバル制度の導入例
日本での導入例について見ていきましょう。
導入例1:自動車運転の労働者
トラック、バス、タクシーを運転する労働者に対しては、運行の安全性を確保する観点から、前後の勤務の間に継続した8時間以上の休息時間を設けることが義務付けられています。
(厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準 」)
導入例2:日本看護協会
日本看護協会は、2013年に夜勤・交代勤務を行う看護師の勤務編成の基準として最低11時間以上の勤務間隔を設けることを定めました。
この休息時間を使い疲労を回復し、次の勤務に備えるために欠かすことができません。
(日本看護協会「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン 」)
最近では、ワークライフバランスを実現する働き方として、また過重労働を防止するための仕組みとして、社会的に関心が高まっています。
大手企業を中心に睡眠と健康、仕事の効率を考え、制度の導入が進んでいます。
(厚生労働省「勤務間インターバル制度導入事例 」)
勤務間インターバル制度導入における助成金
2017年3月の働き方改革実現会議にて、「罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正 」について議論されました。
欧州諸国と比較して労働時間が長く、仕事と子育て、介護などを無理なく両立させるためには、長時間労働の是正が必要とし、罰則付きの時間外労働の限度を具体的に定める法改正が不可欠。
「日本労働組合総合連合会」「日本経済団体連合会」が時間外労働の上限規制等に関して労使合意したことを踏まえて以下とおりに見直しが行われました。
勤務間インターバル制度
・労働時間設定改善法を改正し、事業者は、前日の終業時刻と日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課す
・普及促進に向けて労使関係者を含む有識者検討会を立ち上げ
・制度を導入する中小企業への助成金活用や好事例周知
それにより厚生労働省は、一定の要件を満たす勤務間インターバル制度の導入に取り組む中小企業に対して「時間外労働等改善助成金 (勤務間インターバル導入コース)」を支給する仕組みをスタートさせました。
この助成金は、制度導入のための取り組みに要した経費の一部(新規導入や適用範囲拡大または休憩時間数により上限額あり)を支給するものです。
このように普及促進や好事例周知、助成金などにより、制度の導入を行う企業が急速に増えていくものと考えられます。
※申請の受付は平成30年12月3日(月)まで(必着)です。
2019年4月「勤務間インターバルの努力義務」や「使用者による労働時間把握の義務付け」など働き方改革関連法が一部施行されます。
制度の導入について、社内でご検討されることをおすすめします。
運用方法は?出社が始業時刻よりも遅くなったときの運用例
勤務間インターバル制度の運用方法について、例を挙げて見ていきましょう。
1日の所定労働時間が「9:00~18:00(うち休憩1時間)」の会社において、「休息時間(前後の勤務間隔)を11時間以上とする」制度が導入されたとします。
前日の23時まで残業した場合、次の日の出社時刻は、前日退社から11時間が経過した10時以降になります。
このように、出社時刻が通常の始業時間(9:00)よりも遅くなってしまう場合、次の2通りの運用方法が考えられます。
運用例1:出社時刻が遅れた分、終業時刻を遅らせる方法(所定労働時間全体をずらす方法)
出社時刻が1時間遅くなる分、終業時刻も遅くして、その社員は、次の日の所定労働時間を「10:00~19:00(休憩1時間)」にします。
運用例2:出社時刻と通常の始業時間の間を勤務したものとみなす方法
出社時刻が遅れた時間(9:00~10:00の1時間)は、勤務したものとみなして、「有給」扱いにします。
これらの運用方法については、それぞれの会社で、労使で話し合って決めることができます。
前述した助成金は、どちらの方法であっても支給対象ですが、就業規則に運用方法の明記が必要です。
運用上の注意点として、社員の出社時刻がバラバラになってしまう可能性があります。
「前日の退社時刻が一定の時刻を超えた場合、ホワイトボードに翌日の出勤予定時刻を記入する」などの職場内でのルールを定めておくことが必要です。
勤務間インターバル制度の導入による労働時間の計算の複雑化と対策方法
社員にとってメリットが大きい制度ですが、管理者にとっては社員ごとに始業時刻が変わってしまい、労働時間の計算が複雑化するというデメリットがあります。
月々の残業時間の算出を、手計算(タイムカードに記録されている出退社時刻から計算)で行うと、管理者の労働時間の増加やミスが発生する可能性が高くなります。
対応策として、日々の出退社時刻をデータとして読み取り、自動で労働時間の計算を行える勤怠管理ソフトや表計算ソフトを利用することが必要となります。
勤怠管理クラウドサービス「CLOUZA」は、個人単位で日々の打刻データを確認・変更ができます。
集計データは自動計算され、主要各社のソフトとデータ関連も行えるため、効率よく確認・修正が可能です。
「時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)」は、「労務管理用機器、労務管理用ソフトウェアの導入・更新」に要した経費も支給対象になります。
勤務間インターバル制度を導入する機会に、勤怠管理システムを導入・刷新すると、助成金を活用しながら、過重労働の防止と勤怠管理業務の効率化を同時に図ることができ、おすすめです。
※申請の受付は平成30年12月3日(月)まで(必着)です。