高校生など、18歳未満を雇用する際の注意点とは?
最近は人手不足が深刻になっているため、高校生などを雇用される方も多くいらっしゃると思います。
労働基準法では18歳未満の労働者を「年少者」と区分し、特別の保護規定を設けており、会社で年少者を雇用する際は、原則として深夜に働かせてはならない等、注意すべきことがあります。
最近も、ある引越業者が当時17歳のアルバイトの少年を深夜に働かせた疑いで書類送検される事件がありました。
そこで今回は、年少者雇用の注意点についてお伝えしたいと思います。
労働基準法における年齢区分
労働基準法では、
20歳未満の者を「未成年者」
18歳未満の者を「年少者」
満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまでの者を「児童」
と呼んでいます。
未成年者について、以下のような特別規定が設けられています。
労働基準法によれば、
「親権者又は後見人は未成年に代わって労働契約を締結してはならない。」とされています。
会社はあくまで未成年者本人と契約を交わすべきなので、その親権者などと契約を交わすことはできません。
また会社は給料についても未成年者に渡すべきであり、その親権者などに渡してはなりません。
ただし、「親権者などは、雇用契約が未成年者に不利であると認める場合は、将来に向かってこれを解除することができる。」とされています。
なお、20歳未満の者は民法上単独で契約を締結することができませんので、20歳未満の者を雇用する際には、親権者の同意を得たうえで、本人と会社間で契約締結することになります。
(20歳から成年とされている2018年6月現在)
児童については、原則として雇用することができません。
労働基準監督署長の許可がある場合にのみ、雇用することができます。
許可がある場合であっても、児童を雇用する際は、年少者と同様あるいはより厳しい規制が存在します。
とはいえ、実際には児童を雇用することは多くないと思いますので、以下では主に年少者雇用についてご紹介します。
年少者雇用についての注意点
年少者については、労働基準法上多くの規制があります。年少者を雇用する際は、以下のことに注意が必要です。
1.年齢証明書等の備付け
「使用者は、満18才に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない。」とされています。
2.労働時間、休日の制限
満18才に満たない者については、原則として以下のような規制があります。
・時間外労働(残業)及び休日労働の禁止
・フレックスタイム制の適用禁止
・変形労働時間制の適用禁止
ただし、年少者については以下のような例外があります。
・1日の労働時間を4時間以内に短縮することを条件に、1週40時間以内で他の日に10時間まで労働させること。
・1週間について48時間以下の範囲内、1日について8時間の範囲内において、変形労働時間制(1ヵ月単位、1年単位)により労働させること。
3.深夜業の制限
年少者については、深夜業(22時~翌5時までの業務)をさせることが原則として禁止されています。ただし、以下の場合は例外的に深夜業に従事させることができます。
・交代制により働く満16歳以上の男性
・行政官庁の許可により交代制で働く場合、22:30まで勤務すること
・非常災害時などで、行政官庁の許可を受けた場合もしくは事後に遅滞なく届け出た場合
・農林水産業、保健衛生業等
4.危険有害業務の就業制限
年少者は以下のような業務に従事させることができません。(一部の例示)
・一定以上の重量物を扱う業務
・危険な業務(例:ボイラー、クレーンを使用するもの)
・有害な業務(例:水銀等有害物を扱うもの)
・特殊な接客業務(例:バー、キャバレー等)
5.坑内労働の禁止
年少者は坑内で労働させることができません。
6.帰郷旅費
「満18才に満たない者が解雇の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。」とされています。
実際にはあまり起こらないことかもしれませんが、実家などへ帰る旅費がなく、その場で路頭に迷うことがないように作られている規定です。
ただし、満18才に満たない者がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたときは、旅費を払う必要はありません。
高校生等を採用する際の注意点
前述のように、20歳未満の者を雇用する際には、親権者の同意が必要となります。
同意は一般的に、親権者から署名・押印をもらうことになります。
しかし書面上の署名・押印があったとしても、必ずしも親権者の意思によって、それが作られているとは限りません。
したがって、未成年者を雇用する際は、親権者に電話等で一度連絡し、その意思を確認するという手も考えられます。
また高校生等を雇用する場合、法律上学校の許可は必要とされていませんが、アルバイト禁止の学校である場合などは、雇用が学校に発覚し、結果としてすぐに退職することになることも考えられます。
そこで「学校はアルバイトを認めているか。」「勉強や部活との両立は可能か。」などといったことは本人に良く確認されることをおすすめします。
なお、2022年4月から「成人年齢の引き下げ」が予定されております。
これにより18歳から成人とされる結果、上記法律も一部変わってくる可能性がありますので、ご注意ください。