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試用期間中に残業してもらうことはできる?

試用期間中に残業してもらうことはできる?

労働者の適性を見るため、数ヶ月間の試用期間を設けることがあります。
この試用期間を巡っては、「残業はさせてもよい?」「試用期間の延長はできる?」「お試しの期間だから簡単に辞めてもらえる?」のような様々な疑問が浮かびます。
そこで今回は、試用期間に関して実務でよく問題となることについてお伝えします。

 

試用期間とは?

新入社員にとって、その会社や仕事が自分に合うのかどうかは実際に働いてみなければ分からない部分もあります。
また会社にとっても、労働者の適性を見たいという考えがあるでしょう。
それを見極めるための期間が、試用期間です。

試用期間を設けるか否かについて、法律上の決まりはないので、会社で自由に決めることができます。
だいたい70%程度の会社が、試用期間を設けていると言われています。

試用期間の長さについても、法律上の決まりはありませんが、一般的には3ヶ月~6ヶ月程度が多いです。
試用期間は不安定な状態なので、あまり長い期間を設けることは労働者に酷だと言えます。
しかし、試用期間を延長するのは簡単ではありませんので、短すぎる期間には要注意です。

試用期間を設ける場合は、

  •  
    • 試用期間の対象者
    • 期間
    • 本採用を見送る場合の理由

などを就業規則や雇用契約書に記載する必要があります。

>>厚生労働省 試用期間について

>>厚生労働省 裁判例 「試用期間」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性

 

試用期間中の解雇、離職について

試用期間を設けた場合、
「お試しの期間だからいつでも辞めさせることができる。」
「会社が本採用できないと判断した際は、期間満了によって退職してもらうことができる。」
といった誤解をされている場合があります。

しかし試用期間満了後、本採用を見送ることは「解雇」に該当します。
解雇が認められるには、合理的な理由が必要です。
試用期間の途中で解雇する場合も同様です。

試用期間は労働者の適性を見るための期間ですから、本採用後の解雇と比べると比較的解雇が認められやすいとされています。
しかし、期間満了により当然に解雇できるものではないので注意が必要です。

試用期間中の解雇理由としてよく挙げられるのは、

  • 履歴書などの提出書類に重大な虚偽記載がある
  • 頻繁に遅刻、早退、欠勤を繰り返すなど著しい勤怠不良がある
  • 職場で暴言を吐くなど、著しく職場環境を乱す

などがあります。

一方で、

  • 仕事が合ってないように見える
  • 期待した程の能力ではない

といった程度の理由では、一般的には合理的な解雇理由になりません。
解雇が合理的か否かは難しい問題ですので、困ったときは弁護士などに相談して、回答を得るのもよいかもしれません。

解雇する場合、少なくとも30日前に労働者に対して解雇予告をする必要があり、30日前に予告をしない場合は、解雇までの日数に応じた解雇予告手当を支払わなければなりません。
ただし試用期間中の特例として、試用開始から14日以内に解雇する場合は、解雇予告を行う必要がありません。
とはいえ試用開始から14日以内に適性を判断することは難しく、解雇は余程の問題行動があった場合などに限られます。

一方で労働者側から退職する場合、有期労働契約の場合を除いて、試用期間中であっても自由に退職を申し出ることができます。
ただし民法上、退職の申出から2週間経過すると雇用関係が終了するとされているため、退職日の2週間前までには、申し出なければなりません。

【関連ページ】
「試用期間なら簡単に解雇できる」は誤解です!

 

試用期間中の賃金、残業、各種保険について

「試用期間中は見習いだから少なめの給料でもよい?」
というのもよくある質問です。

試用期間中に本採用後と異なる賃金を設定することは問題ありません。
ただし原則として最低賃金を下回ることはできず、「最低賃金の減額の特例許可」を受けている場合のみ、これを下回ることができます。
試用期間中の賃金を雇用契約書などに明記した上で、労働者によく説明し、納得してもらうことが重要です。

試用期間中であっても、残業をさせることは差支えありません。
ただし残業代や休日労働の割増賃金など、通常の労働者に支払うべき賃金は、試用期間中の労働者に対しても当然支払わなければなりません。
試用期間中の労働者に限ったことではありませんが、残業時間は、法律の範囲内に収めなければなりません。
特に試用期間中の労働者は仕事に慣れていないので、長時間の残業は避けた方が望ましいでしょう。

社会保険や雇用保険などの各種社会保険加入についても、通常の労働者と同様の基準で、加入させる必要があります。

>>奈良労働局 最低賃金の減額の特例許可申請について

 

試用期間の延長について

試用期間中の労働者は不安定な身分に置かれますので、会社は、1度決まった試用期間を自由に延長することはできません。
延長するためには、以下のような条件が揃っている必要があります。

  • 試用期間の延長がありうること、その理由、期間などが就業規則などに定められていること
  • 延長が合理的な理由に基づくこと
  • 延長の期間が合理的な長さであること

 

まとめ

試用期間中の労働者は、比較的解雇が認められやすいことや、解雇予告の例外があることなど通常の労働者と異なる部分があります。
一方で、社会保険の加入などについては通常の労働者と同様に扱わなければなりません。
試用期間中の労働者を正しく雇用できるよう、試用期間について正確な知識を持つ必要がありますね。