Column

コラム

待ったなし!年次有給休暇の時季指定義務のポイントと対策

待ったなし!年次有給休暇の時季指定義務のポイントと対策

年次有給休暇の時季指定義務とは

2018年6月29日の参院本会議にて、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案が可決、成立しました。

その中の一つに、全ての使用者は10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、そのうちの5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないという内容が規定されており、施行日は来年2019年4月1日となります。
>>「年次有給休暇の指定義務」厚生労働省

年次有給休暇の時季指定義務のポイントと会社として施行前にどのように対応すればよいか解説します。

 

「年次有給休暇の時季指定義務化」のポイント

年次有給休暇の時季指定義務について、2019年4月1日から全ての会社に課されますので、以下にポイントを整理します。

1.対象となる労働者

年次有給休暇を10日以上付与される労働者(管理監督者を含む)が対象となります。
パートタイマー等、週所定労働時間数が30時間未満のために、所定勤務日数に応じた日数が付与されている場合も、10日以上であれば対象となります。
具体的には、週所定労働日数が3日(または年間の所定労働日数が121~168日)のパートタイマー等は勤続5年半、週所定労働日数が4日(または年間の所定労働日数が169~216日)のパートタイマー等は勤続3年半でそれぞれ10日付与され、この制度の対象となります 。

2.年次有給休暇を取得させるときの流れ

実際に10日以上の有休が付与された日から1年間の間に、5日以上を取得させなければなりません。
有休を5日以上取得済みの労働者に対しては、使用者による時季指定は不要ですが、取得日数が年間5日未満のときは、法違反となります。
通常は、労働者が時季を指定して取得しますが、この制度では会社等が時季を指定して取得させることになります。
時季の指定にあたっては、会社等があらかじめ本人の希望を聴き取り、その意見を尊重するよう努めなければなりません。

3.年次有給休暇管理簿の作成

労働者各人の取得状況を把握するため、会社等に対し、各人別の有休の付与日、付与日数、取得時季、取得日数を記録する年次有給休暇管理簿の作成と3年間の保存が義務になります。

4.5日以上取得できなかったときの罰則

これまでは有休を使うかどうかは社員に任され、1日も休暇を取らなくても構いませんでしたが、2019年4月以降、最低5日は社員に休暇を取らせないと労働基準法違反となりますので、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。

 

時季指定義務化に向けての対策 ~年次有給休暇の計画的付与~

上記の通り、労働者が年間で「5日」以上有休を取得できていれば、義務化に伴う特別な対策は必要ありません。
ただし、全社員が5日間必ず有休を取得しなければならないので、まずは社員の有休取得状況を正確に把握しておく必要があります。
そして、積極的な有休取得の風土ができていない会社の場合は、有休の取得率を上げるための対策を講じる必要があります。

その対策の1つとして「年次有給休暇の計画的付与制度」挙げられます。
年次有給休暇の計画的付与制度とは、労働者が有休を取得しやすくするために会社側があらかじめ有休の取得日を割り振る制度のことです。
有休の日数のうち5日は個人が自由に取得できる日数として必ず残しておく必要があるため、計画的付与の対象となるのは有休の日数のうち、5日を超えた部分となります。

例えば、有休の付与日数が10日の社員に対しては5日、20日の社員に対しては15日までを計画的付与の対象とすることができます。
具体的には、以下のような計画的付与があります。

1.会社もしくは事業所全体での一斉付与

会社もしくは事業所全体での一斉付与とは、全社員が一律で有休を取得することです。
よくある例として、飛び石連休の平日をお休みとするなどの方法が挙げられます。
全員で一斉に休みを取るので、社員間の引継ぎコストがかからない、というメリットもあります。
会社、事業場全体を休みにしても顧客の迷惑にならない時季に、この一斉付与方式を導入するケースも増えつつあるようです。

2.班・グループ別の交代制付与

上記1のように、会社や事業所全体で一斉に有休を取得することが難しい場合は、チーム・グループごとに有休を付与する日を決める方法が考えられます。
たとえば、該当部署の仕事が落ち着いている時季に、該当部署ごとに有休を設定します。
サービス業など定休日を増やすことが難しい会社、事業所で多く活用されているケースです。

3.年次有給休暇付与計画表による個人別付与

上記1や2が難しい場合は、個人ごとに年次有給休暇付与計画表を作成する方法があります。
たとえば、ゴールデンウィークや夏季休暇、年末年始などの大型連休に有休を追加して大型連休とするのもよいでしょう。
また、誕生日や結婚記念日などの個人的なイベントの日に合わせて有休の取得を推進するケースもあります。

>>「年次有給休暇ハンドブック」厚生労働省

 

まとめ

年次有給休暇の取得義務化へ向けて、会社・人事部は、全社員の有休の取得状況の把握、有休の計画的付与の実施をはじめとする準備・対策を進める必要がありますので、時季指定義務をきっかけとした業務改善、働き方の本質的なあり方を待ったなしに検討すべき時がきています。

【原稿執筆者】
社会保険労務士法人ユニヴィス 社会保険労務士 
池田 久輝