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勤怠管理コラム

労務は、会社の規模を問わず、労働者を雇用している場合には不可欠な業務です。
企業における労務は、バックオフィス業務の中核となる労働管理を担っており、従業員の勤怠管理や給与計算、また従業員の労働・社会保険手続き等の仕事を行っています。
その役割は従業員の労働効率に直結しますので、働きやすい労働環境や生産性向上へ大きく貢献します。
今回は、労務の仕事と役割、労務に求められる能力についてポイントを解説します。

労務とは?

労務の主な仕事内容とは、「労働者が安心して働くための組織づくり」です。
従業員が1万人を超す大企業でも10人未満の小さな企業でも、その企業に雇用されている労働者が安全に、安心して働き、給与を得られるようにするには労務の業務が必要です。
労務担当者が役割を果たすことによって、企業としての活動をより円滑に、効率よく進めることができます。

なお、よく言われる人事と労務の2つの仕事の違いは、「人事」は採用、教育、評価など従業員と直接かかわる仕事で、「人材によって組織を活性化させる」ことを行います。

一方、「労務」は、採用した人の給与計算、労働・社会保険手続き、入社・退職手続き、就業規則の作成、労務トラブル対応など、法律や会社規定に基づいた事務的な裏方の仕事を行います。
労務は業務等について一般的に定義されているわけではなく、企業の規模によっては事務職が一人で労務などの事務全般を行ったり、総務部の中に位置づけられて労務と人事両方の仕事に携わったりすることもあります。
また、人事部が独立している企業では労務と人事が別の組織として事務分掌されることもあります。

 

労務に求められる役割

具体的に労務に求められる役割はどのようなものでしょうか。
労務は、企業の経営資源とされる、いわゆる「ヒト、モノ、カネ、情報」の“ヒト”にかかわる仕事です。
労務には、一般的に次のような役割があります。

労務の役割
  • 労働契約の管理
  • 勤怠管理
  • 給与計算
  • 労働・社会保険関係の手続き
  • 労使関係、労働組合などの対応
  • 労務トラブル対応
  • 就業規則や諸規定の作成や運用管理
  • 従業員の安全・衛生管理
  • 福利厚生施設の運用、管理
  • 社員のモチベーション管理

労務が担当する領域は多岐に渡り、労働トラブルの火種が多くあるため、業務の正確性が非常に重要視されます。

例えば、勤怠管理は、出退勤・時間外・休憩などの時間数や出欠勤・休日出勤などの日数、有給休暇の取得状況などを把握することが求められています。
これらの勤怠情報は就業規則に準じていることの確認や人事評価などに利用されますが、特に近年は、企業における過重労働が社会問題となっていて、しばしば社員やその上司による勤務時間の過少申告や残業代の未払いなどが取り沙汰されており、労働時間管理と職場環境の改善は社会から厳しく監視されています。
勤怠監理を適正に行うことでその抑止にも繋がります。

 

労務に求められる能力

労務は、全社員にかかわる仕事を担っているため、以下3つの能力が求められます。

1. コミュニケーション能力
労務担当者は労務トラブルや労働組合の対応なども行いますので、コミュニケーション能力があることは極めて重要です。
さらに、全ての社員にとって安全で、安心できる労働環境を整えるため、社員が健康上の問題で休職や復職する際にも適切なコミュニケーションが必要です。
2. 専門性の高い知識や管理能力
労務担当者には労働基準法や労働安全衛生法などの法律の理解、的確な事務処理の能力など専門的な知識や管理能力が必要です。
法律や就業規則などのルールにより、会社として「できること、できないこと」を明確に示すことが求められます。

また、給与計算や労働・社会保険関係の手続きは明確に期限が決まっていますので、正確かつ迅速に処理を完了できるよう毎月のスケジュールを確認し、管理する能力も求められます。

3. 秘密保持の能力
個人情報保護法やマイナンバー制度の導入により、会社で扱う個人情報については厳重な管理が必要になりました。
労務担当者は社員の給与に関する情報や健康状態、また、家族構成など極めてプライベートな情報を知り得る立場にあります。
そのため、労務担当者には秘密を守ることができる能力も求められます。

 

まとめ

重要な経営資源である「ヒト」に関わる業務を担い、働きやすい環境づくりや企業の生産性向上に大きく貢献する労務は、その分様々な役割や能力が必要とされ、非常に重要で、専門性の高い仕事です。

ただ、今年の4月から本格的に働き方改革法が順次施行されていますが、制度を導入するだけの形式的な「働き方改革」が導入されていることが多いです。
労務担当者は、単なる事務作業者ではなく、会社の将来、社員の成長など多面的に捉え、「会社と社員にとって何がふさわしい働き方なのか」を考え、施策を実行していく部隊ですので、労務担当者の役割や能力、重要性は今後ますます大きくなっていくでしょう。
これを機に、企業における労務の在り方について今一度考えてみてはいかがでしょうか。

【原稿執筆者】
社会保険労務士法人ユニヴィス 社会保険労務士
池田

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